2017年度はほぼゼロの見込みが2018年度に10億円、2021年度は140億円へと急成長する国内市場がある。広域無線通信技術のLPWA(ローパワー・ワイドエリア)の市場だ。従来の無線通信サービスよりも圧倒的な低料金と低消費電力を武器に、あらゆる機器に通信機能を付加。IoT(インターネット・オブ・シングズ)を支える通信インフラの大本命だ。

図 LPWAサービスの国内市場規模
2021年度に140億円へと急拡大(写真提供:KCCSモバイルエンジニアリング(左)、ソフトバンク(右))
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 瀬戸内海に浮かぶ離島、西島(兵庫県姫路市)。船をチャーターしなければ上陸できない島に2カ月に1回、定期的に通う一団がいた。水道の検針員だ。西島へは本州側から海底配管で送水し、住民に上水道を提供している。

 姫路市から水道検針業務を受託している第一環境は2017年11月、西島の水道検針の自動化に踏み切った。島の水道メーターを無線発信機付きの電子式メーターに交換。遠隔から自動検針が可能になった。船のチャーター費用を削減できただけでなく、「検針員が重労働から解放される」(松本太郎常務取締役)。この水道メーターの無線通信手段がLPWAの方式の1つであるSigfox(シグフォックス)だ。

図 離島や閉域、山地で利用されるLPWAの例
あらゆる場所が「圏内」に(写真提供:第一環境(左上)、京セラコミュニケーションシステム(左下)、KDD(I 中央)、NTTドコモ(右))
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8年間電池交換なしで稼働

 水道メーターの設置場所はガスや電気と異なり分かりにくい。草木が茂る中を分け入って探し、重い鉄のふたを開けて、初めて検針できる場所もある。重労働に加え検針員の高齢化が進むなか、「人手の確保が難しい」(同)。

 LPWAはこうした窮地に救いの手を差し伸べる。これまでも携帯電話網などを使った自動検針を検討してきたが、通信料金の高さと電力供給がネックだった。Sigfoxの通信料金は、端末台数にもよるが最も安い場合で1台当たり月8円程度。西島は端末数が少ないためそこまで安くはないが、クラウド側のシステム利用料などを含めても「船をチャーターして人が検針するよりも安上がりだ」と第一環境の菊地和彦事業企画部長は明かす。

 電力消費の点でも優れる。水道メーターは計量法施行令により8年間の有効期間が定められている。水道メーターを提供するアズビル金門の大谷眞弘水道ソリューション営業部マネジャーは「水道メーターには8年間電池交換なしで稼働し続ける省電力技術が必須」と話す。この条件を満たす技術としてLPWAに白羽の矢が立った。

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