ITデューデリジェンス(資産査定)とは、主にM&A(買収・合併)の際に、買収先企業の情報システムを調査することを指す。買収先が、保有するIT資産の状況を正確に把握することで初めて、新会社発足日(Day1)までのシステム改修や、将来的なシステム統合(Day2)の計画が立てられる。しかし、ITデューデリジェンスの重要性は、十分に浸透しているとは言い難い。

 本特集では全5回にわたり、ITデューデリジェンスの「いろは」を解説する。第2回は、ITデューデリジェンスを実施する前段として、注意しておくべき落とし穴を紹介する。(編集部)


 「M&A(合併・買収)は想定外のことで予算がない。格安でサポートしてくれないか」――。M&Aを巡る支援サービスを手掛けていると、こんな相談を受けることがある。IT部門の苦しい状況は理解できるが、前回紹介した「ITデューデリジェンス(資産査定)」や「統合計画」の策定に取り組んでいれば、こうした事態は避けられるはずだ(関連記事:あなたは他企業のIT資産を査定できますか?)。

 ここではM&Aや事業統合において、新会社発足日(Day1)と情報システムの完全統合(Day2)という二つの山場で、どんな落とし穴がIT部門を待ち受けているかを紹介しよう。あらかじめ落とし穴が分かっていれば、対処策がおのずと見えてくるはずだ。

落とし穴 1:夢を見てしまう

 Day1を無事に乗り切るポイントは、いかに作業を“最低限”に抑えられるかに尽きる。M&Aや事業統合では、早期にシナジーを発揮するために様々なことをやりたくなる。業務プロセスを見直したい、そのために新システムを導入したいといった具合だ。特に経営陣や経営企画部門は、こうした考えを持ちやすい。このことは大きな落とし穴になり得る。

 一般的なM&Aのプロセスでは、ITを含むデューデリジェンスをしてからDay1までの期間は、1年未満しかないケースが多い(図1)。この短期間で新たにシステムを企画、開発し、テストをやり切り、データ移行を済ませるのが現実的でないことは、IT関係者であれば想像はたやすいだろう。

図1●M&Aにおける一般的な流れ
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 そもそもDay1で最低限、対応しなければならない作業は決して簡単なものではない。分かりやすい例を挙げると、買収先の会社名が変わることへの対応だ。会社名を変更するだけでも、各システムで使用されている帳票類の修正はもちろん、他社とのインタフェースの改修、データ移行など多岐にわたる開発が生じる。最低限の改修だけでも軽く数千万円を超えるプロジェクトになるのが常で、買収先の情報システムによっては億単位の規模にもなりかねない。

 よっぽど入念に準備を進めてきたM&Aでもない限り、新しいことをやる余裕などとても無いのが実態だ。にもかかわらず、システム運用や保守といった平時のプロジェクトをこなさなければならないので、要員や予算は限られたものになる。

 Day1ではあくまでも、現在の業務を止めない、決算が問題なくこなせるといった水準をゴールに設定するべきだ。IT部門以外からすると物足りないものに映るかもしれないので、Day1に当たって必要な改修項目を丁寧に洗い出し、それぞれの工数やコストを統合計画に明示することが必要になる。その上でDay1で取り組む内容について、コンセンサスをとっておきたい。

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