自動倉庫をバックにして青色のアーム型ロボットが16台、横一直線にずらりと並ぶ。ロボットは「シュッ、シュッ、プシュー」といった空気音を立てながら、自動倉庫から送られてきたトレーに“手”を突っ込み、指示された個数を正確かつ機敏な動きで取り出していく─。

 まるで工場の生産ラインを見ているようだが、実は、医薬品卸売業の東邦薬品が2014年1月、埼玉県久喜市に開設した物流センター「TBC(東邦薬品物流センター)埼玉」の光景だ。合計21台のロボットが、全12工程のうち4工程をこなす。このほか3工程を自動化しているため、手作業は5工程まで減った。

 同じ規模の「TBC東京」と比較すると作業員は半減、単純計算で生産性は2倍。ロボット化や自動化のコストは、人件費削減などにより3年ほどで回収できる見込みである。

ロボット化で生産性が2倍に向上
東邦薬品がロボット化を進めたTBC(東邦薬品物流センター)埼玉は、ロボット化されていない既存の拠点より生産性を2倍に向上させた。数字は2015年度の実績。2015年度の下期だけで見ると、TBC埼玉の1人当たり生産性は2億2000万円を達成している
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 作業員を減らしながら生産性を高める。これこそが、東邦薬品がロボット化を進めた最大の目的だ。背景にあるのは人手不足。「地方では重い荷物を扱える若い人材が集まらない。今後さらに雇いづらくなるのは間違いない。人手ゼロを目指してロボット化に取り組んでいる」と、東邦ホールディングスの森久保光男常務取締役開発本部長は話す。

2年間で出荷ミスは6個だけ

 もう1つ、東邦薬品がロボット化を進めた目的がある。出荷ミスの撲滅だ。医薬品という人命に関わる商品を扱ううえで、出荷ミスはあってはならないこと。だが手作業では誤ピッキングなどのミスを防ぎ切れない。人手不足で作業員1人当たりの負荷が高まると、ますますミスが起こりやすくなることが予想される。

 そこで、作業工程の各所でセンサーを使った自動検品の仕組みも構築した。ロボットがピッキングした商品の重量をセンサーで検知し、出荷指示データと一致しているかを判断する。目標として掲げる出荷精度は99.99999%(セブンナイン)。非常に高い数値目標だが、今のところクリアしている。

 TBC埼玉では、2014年4月~2016年3月の2年間で合計6856万4292個の商品を出荷した。このうち誤出荷はわずか6個。出荷精度は99.999991%で、セブンナインを達成した。誤出荷した商品は、バーコードで管理されていない薬袋、尿カップなどの消耗品や、仕入れ時点で既に内容物が間違っていた商品だ。

 ピッキングミスしないとはいえ、ロボットは高額の投資。森久保常務はロボット1台の導入コストを、「5年間真面目に働いてくれれば時給換算で950円ほどで済む。今、首都圏の物流センターでは時給1000円以下でパートタイムの社員を雇うのは不可能」と説明する。

 ただし、人間のように雇ってすぐ仕事を始められるわけではない。ロボットが作業しやすい環境を整えてあげる必要があるからだ。

 先行して活用が進む製造現場のノウハウを生かせそうだが、「求められるノウハウが全く異なる」と森久保常務は指摘する。理由は、ラインを流れるモノの特性にある。生産ラインには自社製品だけが流れるので、ロボットがつかむ位置などをあらかじめ定めたうえで、ロボットの動作をプログラミングできる。

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