「緊急タスク!私のアイスクリームが溶けそう。助けて!!」。チームの一人にこう声をかける。そこから情報が伝達され、1~2分以内にチーム全体が部屋の片隅に置いたアイスキャンディーめがけて集まっていく。午後、ちょうど疲れてきている若者には甘いアイスキャンディーはいいリフレッシュメント(おやつ)になる―。

 これは人材育成のワークショップの一環で、情報伝達とはどういうことかを体験するゲームだ。具体的な指示がなくても、チームが状況を理解して動ける事実を観察するためのツールでもある。慣れてくると、筆者の姿を見るだけで動き出す。

 このゲームを「アイスブレーキング」と呼んでいる。「アイスクリーム」と、コミュニケーションを妨げる障害を取り除く「アイスブレイク」を掛け合わせた造語だ。元受講生は社内ですれ違えば、「ヤスさん、アイスありがとう!」と笑顔で声をかけてくれる。

 筆者がITエンジニアの新人研修に携わるようになって3年半。徐々に研修全体の構成を任されるようになった。毎回、受講生からフィードバックを受け、修正を続けている。現在は講義形式のセッションは少なくなり、チームで役に立つアプリケーションを組むプロジェクト形式の研修を中心に構成している。

 最新の研修形式は昨年から始めたものだ。参加者でチームを組み、実際に社内で使うアプリケーションを数週間で作る。アジャイル開発技法の一つである「スクラム」を利用し、成果を社内顧客に共有してフィードバックを得ながら開発を進めていく。チーム作り、課題選び、役割分担やデモするポイントなど、すべてチームで考え、課題を解決しながら前進していく。

 あらかじめ決まった計画は与えない。顧客からの要望も曖昧だ。自ら顧客にインタビューを繰り返し、本当に必要なものを探り出さなければならない。初めは戸惑っている受講生も、すべてが研修の一環である旨を徐々に理解し、状況を楽しみ始める。顧客役の社員の笑顔が見えると、一層良いアプリを作ろうと、開発が自発的にヒートアップしていく―。

 こうした活動の中で筆者は、新しくチームに参加する人がどのように仕事を始めていけばよいのか、アイデアを練りつつ実践を重ねてきた。本連載では、こうした経験の中で作ってきた、チームで働くITエンジニアのスキルと成長について考える「スキルマップ」の手法をベースに話を進めたい。

 このスキルマップは、ITエンジニア自身がチームにおける自分の価値を捉え、これからの成長の方向性と投資価値を考えるのに役立つ。これからどのような経験やスキル、考え方を獲得していくべきか見えてくる。メンバーの育成を担うマネジャーやリーダーにとっては、人材における組織内の現状把握と今後の投資計画の策定に一役買うだろう。

企業活動に必要な三つの要素

 スキルマップの手法を解説する前に、連載の第1回として、今の若手ITエンジニアを取り巻く状況を把握しておこう。

 今のITエンジニアが直面する企業活動は、顧客にとって必要なものをただ届けるだけでなく、顧客が気づかなかった新しい価値を見いだす活動が重要になってきている。その活動には、大きく分けて三つの要素が必要だ。すなわち、パッション(情熱)、スキル(技術)、スモールチーム(小さなチーム)である(図1)。情熱をもって問題を理解し、スキルを持って検討し、小さなチームで素早くシステムを実現していかなければならない。

図1●顧客が気づかなかった新しい価値を見いだす活動に必要な三つの要素
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