Office 365やGoogleApps、Salesforceなどのクラウドサービスを業務で利用する企業が増加する一方で、セキュリティが心配という声は根強い。当社のHDEOneは、クラウドサービスへのアクセス制限、デバイス紛失対策、メールの情報漏えい対策などのセキュリティ機能を付加することで、クラウド環境を安全に利用できる。2012年にサービスを開始して以来、ユーザー数は順調に増え、150万人を超えた。

 パッケージソフトウエアを開発していた当社がクラウド事業に転換するきっかけは2011年3月の東日本大震災の発生だ。東京・渋谷にある本社ビルは大きく揺れた。「オンプレミスでのシステム運用は事業継続のリスクが大きい。今後、業務に必要なアプリケーションをサービスとして利用するクラウドの普及が加速する」と確信した。

日本のアニメやゲームに詳しい東南アジアの学生は東京好き

 今は順調に成長しているが、HDEOneを始めたころ知名度が低く、ソーシャルゲーム業界などによる採用の増加で、人材獲得は困難を極めた。しかし、HDE Oneの引き合いは急増し、エンジニアの増強は不可欠だった。そこで、海外の人材に目を向けた。

 社内に採用チームをつくり、東南アジア各国の有名大学を訪問したり、就職フェアに参加したりして採用活動をすると、日本のアニメやゲームに詳しく、東京で働くことに強い関心を寄せる学生が多かった。それなら東京に来てフルタイムで働く体験をしてもらおうと考え、東京で就業体験ができる「HDEインターンシッププログラム」を設けた。期間は30~60日、渡航費や滞在費は当社が負担した。

 インターンシップ制度のビラを配って募集したところ、応募が殺到した。採用チームは電話や通話サービスのSkypeを使った面接の対応に追われた。その解決策として、募集プロセスをデジタルシフトした。具体的には、インターネットでエンジニア向けの課題を公表し、応募者に回答してもらい、自動的に高いスキルの学生を絞り込んだ。そして、上位10%ほどの学生とSkypeで面接するようにして選抜を効率化できた。

 このやり方は好評だったので、募集活動もデジタルシフトした。ビラに加え、東南アジアで広く使われているFacebookを通して応募を呼び掛けると、予想外の反響があった。当社が訪ねた国は7~8カ国にすぎなかったが、応募は70カ国を上回り、11カ国の学生を受け入れた。その後、海外人材の採用を加速し、現在では130人いる社員のうち、21人が外国人になっている。

 インターンの採用によって当社は様々なことを学んだ。それぞれの国のトップクラスの大学で学び、真面目に仕事をする学生との出会いはその最たるものだ。国籍や文化、宗教の異なる多彩な人材を活用するダイバーシティーの環境も社内に自然と根付いた。彼らと仕事をすることで、当社が海外市場へ進出する際に必要な考え方も理解しやすくなった。海外学生の採用により、事業のグローバル化は一気に加速し、HDE Oneは現在、世界30カ国以上で利用されている。

 今後も海外からの人材を受け入れる一環として、英語を社内公用語にするため、ゴールの設定、教育支援制度の整備、部門別の英語適用ポリシーの作成、雰囲気づくりという4つの目標を掲げる。

クラウドセキュリティサービス、HDE Oneの概要

英語を話せど生粋の日本人
着物に風呂敷の姿を貫く

 ゴールの設定として、2016年10月から英語を公用語にすることを2年前に宣言した。また、部門別の英語適用ポリシーは、部署ごとに「見出し、表題を英語に」「公式的な文書は英語に」「オンラインのディスカッションは英語で」のように定めている。教育支援については、当社が費用を全額負担し、社員がテレビ電話で英会話を学べるほか、フィリピンのセブ島に短期留学する支援制度もある。雰囲気づくりとして、日本人と外国人の交流が進むように、節分やひな祭りなどの日本の行事を社内で開いている。

 私が率先して英語を使い始めると、日本人社員から「外国の会社になるのではないか」という懸念が出始めた。英語はビジネスのツールで、グローバル化を進める手段にすぎない。着物姿を貫けば、「英語は話せど生粋の日本人だ」と理解してもらえると思った。海外出張でも着物姿に風呂敷というスタイルを貫く。おかげで、海外でも覚えてもらいやすくなった。

 これからも社内改革を続けていく。既に経営会議は廃止し、社内SNSによるやり取りに変えた。社内業務もクラウドに移行、リモートワークができるようにしている。HDE Oneには、その過程で見つけた数々の課題の解決策を盛り込んでいる。今の社風を生かし、顧客よりも先に課題を見つけて新しいサービスを提供していきたい。