コンピュータは驚異的な速度で進化を続ける。この25年間で処理速度は50万倍になった。現在、東京からニューヨークまで13時間ほどかかるフライトがわずか0.09秒に短縮されるのと同じだ。今後10年ほどで今より1000倍速くなるといわれている。

 この恩恵を最大限享受しているものの1つにコンピュータグラフィックス(CG)がある。1970年代初めに研究が始まり、1990年代に入るとハリウッド映画で使われ始めた。最大のターニングポイントといえるのが映画「ターミネーター2」での採用だ。実写と合成し、本物とCGの境界が分からないほどリアルに表現することに成功し、大反響を呼んだ。

リアルタイムレンダリングなら1/60~1/30秒で映像を作成

 映画だけではない。ゲームの世界でもCGは積極的に使われてきた。1994年に発売された「プレイステーション」は3次元空間内で仮想的な立体物を描画する3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)を駆使し、人気を博した。

 映画と異なり、ゲームではプレーヤーの操作に即座に反応し、映像を作成しなければならない。それを実現する技術がリアルタイムレンダリングだ。映画で使われるプリレンダリングでは、あらかじめ3DCGでレンダリングした映像をつなげて1つのシーンをつくり出す。作業工程が多く、前工程に戻りにくいうえ、レンダリング後の修正に時間がかかる。それにひきかえ、リアルタイムレンダリングは3DCGを60分の1秒とか30分の1秒といった極めて短い時間で処理し、映像を作成する。

 シリコンスタジオは、リアルタイムレンダリングで世界の最先端を走る。当社のリアルタイムレンダリングエンジンのMizuchiは3DCGによる画像品質を劇的に高め、映像制作の工程に革新をもたらした。最大の特徴は、光の反射など物理現象を再現する技術「物理ベースレンダリング」の採用にある。現実世界のような光の陰影まで精緻に再現でき、コンピュータの性能向上によって画質も飛躍的に向上した。レンダリングの待ち時間はゼロで、前工程に簡単に戻れ、リアルタイムに修正ができる。リアルタイムに生成した映像でさえも、現実と仮想の区別がつかない。

 リアルタイムレンダリングはデジタルビジネスの可能性を大きく広げる。とりわけVR(仮想現実)・AR(拡張現実)の応用に対する期待は高い。経済産業省がまとめた2020年のコンテンツ産業についての報告書では、VR・ARの本格的な利用に加え、AI(人工知能)とCGの融合などを記載している。2016年はVR元年ともいわれており、市場の急速な成長が見込まれている。

リアルタイムレンダリングによる映像制作の革新

3DCG技術の利用範囲拡大
新規ビジネスへ参入

 これまではモニターという2次元上で3次元を表現してきた。VR・ARと3DCGが組み合わさることで、これからは3次元そのものを疑似体験できるようになる。メガネ型の軽量なAR端末があれば、スマートフォンの画面も不要になり、モバイル市場を飲み込む形で市場が広がるだろう。今までの常識を打ち破り、これまでとは全く異なるビジネスの可能性を開く。

 シリコンスタジオは、ビジネスでのリアルタイム3DCG技術の利用範囲の拡大に向けて様々な活用法を提案中だ。自動車販売での活用はその1つ。顧客が見たい車が販売店になくても、顧客の目の前に3DCGによって表示する。また、顧客の要望に合わせ、内装や外装のオプションを瞬時に切り替えて表示すれば、実車を用意しなくても顧客はイメージを把握できる。車のシートに座った状態で、VR・ARデバイスでCGを合成すれば、車を運転しているのと同じような体験を味わえる。

 建築の世界でもリアルタイム3DCG技術は可能性を広げる。一例を挙げれば、展示場に出向かなくても家具やカーテンの材質や色などをその場でカスタマイズでき、ソファの入れ替え、照明の変更、テーブルの配置など、どれがいちばん自分の部屋にふさわしいかを事前確認できる。様々な組み合わせを3DCGで表現し、同時に見積もりを自動的に提示することも難しくない。

 自動車や建築だけでなく、教育、医療など様々な世界でリアルタイム3DCG技術は可能性を広げる。当社の使命は、新しいアイデア、活用に応えられる技術を提供することだ。実物と区別ができない高品質の3DCG映像をリアルタイムで実現し、現実世界のありとあらゆるものをデジタルで再現することで、数年後には全く想像していなかった活用法が生まれてくるだろう。エンターテインメントで蓄積してきたリアルタイム3DCG技術を様々な業界に提供し、共同開発に取り組み、共に成長を目指したい。