社会やビジネスの中核プロセスにデジタル技術が入り込み、大きな革新がもたらされる。そんなデジタル革新が、世の中の至る所で進行している。今押し寄せている大きな波はIoT(モノのインターネット)であり、AI(人工知能)とロボティクスである。例えば、IoTで集めたデータをAIなどで分析し、実世界にフィードバックする。このようなサイクルを自動化することで、実世界を改善できる。

 また、以前のICTの主要テーマは効率化、コスト削減だった。最近はデジタル技術を駆使して顧客とダイレクトにつながり、売り上げや利益向上に生かそうとする企業が増えている。

つながることの利便性と脅威に企業はどのように向き合うか

 デジタル革新の本質は3つに集約できると考える。

 第1に、人が中心(ヒューマンセントリック)。生活者が商品の価値を定義し、評価する時代といってもいい。生活者の評価を得るために、企業は一人ひとりをよく理解し、その人にとっての価値最大化を考えなければならない。

 第2に、人やモノ、環境の状態・状況の見える化。様々なデータを収集することで、「今何が起きているか」を瞬時に把握できる。このことは人へのフィードバックや、モノと環境の最適制御を可能にする。

 第3に、つながることの利便性と脅威。従来のB2C、B2B2Cとは異なるビジネスモデルとして、B2B2C2Cの企業群が急成長している。その代表がUberやAirbnbである。特にシェアリングエコノミーやマッチングサービスの分野で、B2B2C2Cモデルは既存企業のビジネスを脅かす存在になりつつある。

 これは一部の業界の話ではない。駐車場スペースの貸し借りを行うマッチングサービスがあり、他にも広告や金融にも広がりつつある。多くの業界の企業にとって、ひとごととはいえないはずだ。

 一人ひとりの利用者にはライフサイクルがある。入学や卒業、結婚といった長いスパンのサイクルもあれば、家庭や職場での1日単位のサイクルもある。多様なライフシーンにおいて、自社はどのような価値を提供したいのか。企業はこの点を明確にする必要がある。

 忘れてならないのは、利用者は常に成長、変化し続けているということ。企業は一人ひとりの変化を捉え、理解することで、提供価値をより高めることができるはずだ。

一人ひとりの評価基準を捉えるにはライフサイクルのシーンで理解する

顧客のライフサイクルを理解し、新しい価値創造を目指す

 利用者または顧客を理解するために、一企業の持つ情報は限られている。自社の事業ドメインに関係するシーンについてはある程度の情報があるはずだが、他社の持つデータを共有できれば、より深く顧客を理解できるはずだ。最終的には、顧客のライフサイクル全体を理解した上で、顧客の変化に対応する価値提供を目指す。富士通はそのためのプラットフォームづくりを、ベンチャー企業や世界的なICT企業などのパートナーと協力しながら進めている。これが、「MetaArc」である。

 MetaArcは「つながる→集める→分析する→価値に変換→最適に制御→つながる」という一連のサイクルを持ち、企業や業界といった枠を超え、顧客と社会のデジタル革新を加速するプラットフォームである。

 クラウドをベースに提供されるMetaArcには、モバイルやIoT、AI、セキュリティなどの技術が用意されている。外部接続用のAPI経由で接続できるので、簡単に自社システムと連携させて活用できる。その適用領域は幅広い。マーケティングや交通情報・災害対策、商品のトレーサビリティ、工場の見える化、高齢者や子供の見守り、農業・畜産業の高度化などの分野で、既に約300件の実証実験を実施している。

 例えば、川崎市における子育て情報の提供である。おむつを替えられる施設の場所や子育て関連イベントなど、子育て中の人たちに役立つ情報をスマホ上にマッピングして表示。実証実験の結果、0歳児を持つユーザーの9割以上から支持を得られた。

 富士通は、デジタル革新のために、オファリングの内容を8分野24テーマに整理。顧客はいくつかのパターンの中から自社に合ったものを選び、カスタマイズして導入できる。また、当社と共にゼロから価値創造の仕組みづくりに取り組むケースもある。

 そんな顧客との共創する場として、「FUJITSU Digital TransformationCenter」(東京・浜松町)と「FUJITSU Knowledge Integration Base PLY」(東京・蒲田)を設置した。顧客と共にデジタル革新に向き合っていきたいと考えている。