現在、「IoT(Internet of Things)」というキーワードがIT業界だけでなく、産業界全体で大きな話題を集めている。ただし、製造現場のモノには必ずヒトが関与する。

 当社に限らず、製造業ではセンサーなどを活用したIoTには古くから取り組んできた。それに対して、これまで製造現場におけるヒトのIT武装は手薄の状態だった。現在、現場のヒトもインターネットと結ばれるようになり、ヒトのインターネットすなわち「IoH(Internet of Human)」とIoTがセットになって初めて、生産性向上や安全性の確保が実現できる。当社では総称して「IoX」と名付けている。

IoTにIoHを導入することで安全確保や作業改善に取り組む

 IoHの具体的な事例を紹介しよう。ある製造現場の作業員の状態を逐次モニタリングし、遠隔の管理センターから指示を出す取り組みだ。作業員が身に着けているスマートフォンとスマートウオッチから、位置情報や動作状況、心拍数といったデータを収集している。

 作業員の心拍数が上がるなど、通常でなくなる場合には、管理センターにアラートが出るようになっている。さらに、作業員はAR(拡張現実)機能の付いた眼鏡をかけていて、作業員の眼鏡のモニターにメッセージを表示したり、作業員が見ている光景を管理センターのモニターに映し出したりする。例えば、危険な作業に当たる作業員に対して、管理センターにいるベテラン作業員が、次にどんな作業が必要かを判断し、指示を映し出している。

 製造現場の作業効率の改善にも取り組んでいる。作業員のヘルメットに装着したUWB(超広帯域無線)タグから3次元の位置情報を収集し、利き腕に着けているスマートウオッチから加速度と角速度の情報を収集する。集めた情報から、機械学習によって効率的な作業方法を導き出し、実際の作業に生かすという取り組みだ。

 IoXの活用は、主に作業現場における取り組みとなる。一方、多くの製造業では、ERP(統合基幹業務システム)やSCM(サプライチェーン管理)などの業務システムと現場のデータが連携していないのが現実だ。業務システム同士でも、PLM(製品ライフサイクル管理)とERPの部品表(BOM)が連携できていないケースも少なくない。

 IoXの活用を成功させるには、計画系の業務システムと現場系のシステムをリアルタイムで連携させなければならない。これを実現するためには、MES(製造実行システム)やMOM(製造オペレーション管理)などのシステムで現場データを収集するとともに、これらを計画系の業務システムと連携させる役割を担う「IoXプラットフォーム」が必要になる。

 当社では、業務システムのデータと、ウエアラブルデバイスなどが生み出す現場データを統合するIoXプラットフォームを開発した。オープン・ソース・ソフトウエアをベースに独自に開発したもので、スマートデバイスとのインタフェースと業務システムとのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を備えている。業務システムと現場データをリアルタイムで連携させる必要最小限の機能を備えた軽量な構成になっている。

 大量データのバッチ処理のために、当社のデータ分析統合基盤「Data Veraci(ダータヴェラーチ)」と連携する機能も備える。パブリッククラウドのサービスとの連携も可能だ。

IoXソリューションにおける標準サービスの概要

スモールスタートの検証がIoXで成功するカギ

 IoXの導入を成功に導くためには、次の3つを認識しておく必要がある。1つ目が、データをつなぐことだ。前述したような、業務システムと現場データの連携だけにとどまらず、社内の部門間や社外の顧客ともリアルタイムに近い状態でデータを共有する仕組みが必要だ。IoHの場合、近距離ネットワークにおいてデータ収集の安定性を確立することも重要だ。

 2つ目が、スモールスタートでのPoC(コンセプト検証)だ。新たな取り組みは早く安く試すことが必要だ。独自に仕組みを作り込むのではなく、前述したIoXプラットフォームやData Veraciなどの標準的なソリューションやサービスを最大限に生かすこと。経験豊富なスペシャリストやコンサルタントを採用することも考えるべきだろう。

 3つ目が、PDCA(計画・実行・検証・改善)サイクルを回し、ビジネスとしての継続性を確保することだ。事前にビジネスモデルを検討することも必要だろう。

 当社では、IoXが本格活用される時代を見据えて、今年4月に「IoXソリューション事業推進部」という専門組織を立ち上げた。当社のスローガンにもある通り、「その先の答え」を皆様と一緒に探していきたいと考えている。