2016年4月1日に始まった、電力小売りの全面自由化。この制度改革に向けて、東京電力グループが開発した新システムのトラブルが長期化している。電力販売事業に新たに参入した企業が「電気料金の請求ができない」「誤った電気料金を請求しそうになった」などの事態に陥った。約半年経過してもシステムトラブルが解消されない事態に陥っている。

 電気料金の請求に必要な、使用量のデータを通知できていない件数は最大時に3万件を超えた(図1)。人手によりデータ集計を進めるなどの措置により、徐々に件数は減少。9月23日には「未通知をほぼ解消した」と、東京電力パワーグリッド(東電PG)が発表した。同社は、東京電力ホールディングスグループの一般送配電事業を担う事業会社である。

図1●電気料金の請求に必要な、電気使用量データの未通知数の推移
(出所:東京電力パワーグリッドの9月7日発表資料より抜粋)
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 しかし、2016年4月から8月に発生した未通知件数のうち約8000件については、通知が完了していない。東電PGは、電力を販売する「小売電気事業者」との協定を結び、これら約8000件に対処する方針だ。「電気使用量データを確定させるための調査・確認を全て実施しても確定できないものについては、協定によって使用量を確定する」(東電PG)。

 この事態を招いたのは、東電PGが開発した「託送業務システム」における不具合だ。託送業務システムは、東電PGの送配電ネットワークでやり取りされる電気使用量を管理する情報システム(図2)。東電PGは、発電所から送られてきた電力を、一般家庭や企業といった最終消費者まで送電する「託送」と呼ばれる業務を担っている。その中心的な役割を果たす。

図2●託送業務システムの概要図。スマートメーターなどの計器から受信したデータを基に、電気使用量データを算出する
(出所:東京電力パワーグリッド7月25日発表資料より抜粋)
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 託送業務システムは、東京電力が2013年に開発プロジェクトをスタートさせた。開発ベンダーとしては、三菱電機を選定し、多数のITベンダーがプロジェクトに参加している。ピーク時には2000人月の人員が投入された、一大プロジェクトといっていい。

 この託送業務システムや関連する業務でトラブルが発生したために、電気料金の請求に必要なデータを通知できていない。電力を販売する「小売電気事業者」が、消費者や企業に請求する電気料金を計算するには、東電PGから電気使用量データを受け取る必要がある。契約者がどれだけ電気を使用したか、のデータだ。このデータが届かないため、電気料金を請求できないわけだ。

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