去る10月27日,富士通の田中達也社長は経営方針の進捗レビューの中で、ビジネスモデル変革や海外改革が成功した場合の連結業績見込みを明らかにした(表1)。それによると営業利益率が2015年度の4倍の10%以上、キャッシュフローを2倍の1500億円以上、自己資本比率を今の1.6倍で倒産しにくい指標とされる40%以上、海外売上比率を50%以上に引き上げることなどを目標に据えた。おそらく社長在任5年と目される最後の2019年度までに実現するのが目標と考えて良い。

表1●富士通田中社長の連結業績・現状と目標
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米IBMやNECと同じ道を踏襲する富士通

 富士通はモバイルとPCを2015年度末に分社化した後、まずPC事業を先達の米IBMやNEC同様に、合弁発足の数年後に中国レノボに完全売却する道を踏襲するはずだ。そして、モバイル事業もパートナーを探して同様とするだろう。それを社長在任中に成し遂げたとしたら田中社長の手腕は評価されるはずに違いない。

 富士通のビジネスモデルは、米IBMやNECと同じく企業向けハード、ソフト、サービスの専業事業となるだろう。営業利益率の目標もテクノロジーソリューション(テクソル)専業となれば4倍から2倍以下となり2019年度までに達成の可能性が高まると思われる。最も達成が難しそうなのは自己資本比率40%か。過去30%台に乗せたことがない富士通だが、米IBMの実績(13.0%)と照らすと、それほど大きな意味を持たないのかも知れない。むしろデジタルビジネス市場開拓に向け投資を惜しまぬ姿勢維持が重要だ。

 PCやモバイルの分社化、そして続く売却構想は黒川博昭社長時代からの懸案事項である。IBMがPC事業を売却した後の経営方針会見で「PCやモバイルの経営は(担当役員に)任せている。私は関知しない」と答え、テクソルへの資源集中を強調した。そのシナリオの実現を野副州旦氏が引き継いだ。しかし、野副氏の急な辞任の後、PC出身の山本正已社長登板で分社や売却構想が後ろにずれたことは否めない。

 PCやモバイルはボリュームが事業を左右する。PCは2005年度の4277億円の売り上げをピークに、2015年度は43%減の2427億円に落ち込んだ。PCはドイツの富士通テクノロジーソリューションズでも製造されているため、この売り上げが全てではない。日本の工場から国内外に販売された金額(海外比率22%)の推移である(図1)。モバイルの1550億円は国内だけ、海外実績はない。

図1●富士通のPCとモバイル事業の売り上げ(単独決算)
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 携帯電話やスマートフォンといったモバイルも2011年度のピーク3218億円から52%も減った(図1)。これが前回(11月9日掲載)の表1「歴代社長の業績」にある田中社長初年度の単独決算営業損益が赤字249億円の大きな要因だ。この希な単独の大幅な営業赤字は監査法人から是正を指摘されたという。

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