情報システム部門(以下、情シス)の仕事というと、システム構築のプロジェクトばかりに視点が行きがちだが、開発プロジェクトは常にあるわけではない。普段はいわゆる定常業務を行うが、情シスの定常業務は多岐にわたり、結構大変だ。定常業務をざっと分類すると「1.システムの運用・保守・維持管理」「2.IT資産管理」「3.ヘルプデスク」「4.次のシステム案件の企画・調査」「5.エンドユーザーのリテラシー教育」となる。

 この中で、1.システムの運用・保守・維持管理はベンダーと保守契約を締結してソフトウエアのメンテナンスなどはベンダーに任せることが多いだろう。また、サーバーもデータセンターやクラウドサービスを利用すれば情シスにかかる運用負荷は軽微である。2.IT資産管理はPCのリース契約やアプリケーションソフトのライセンス管理などだが、これは会社によって情シスがやるか総務がやるかまちまちだ。大企業のようにPCの台数が多いとかなり手間のかかる業務となる。ただ、やるべきことは単純で、管理の仕組みをきちんと作り、管理ツールを活用すれば効率化ができる仕事だ。

 3.ヘルプデスクはエンドユーザーへのサービスレベルをどの高さに設定するかによって大きく変わってくる。エンドユーザーの時間単価が高く、わずかな時間のロスも問題となるような金融や経営コンサル、弁護士事務所などは専任のヘルプデスクを常駐させるが、それほどクリティカルでない業種ならヘルプデスクを電話やメールで行う専門会社に外注したり、手の空いている情シス部員が対応したりする。

 1~3は伝統的には情シスの仕事である。だが、現在のIT事情からすれば、すべてを社内でやる必要はない業務である。逆に4.次のシステム案件の企画・調査、5.エンドユーザーのリテラシー教育は、情シスの定常業務の中で大きな付加価値を生み出す可能性のある業務だろう。古くは情シスの仕事は「企画・開発・運用」の三つと言われたが、現在は「企画・調達・開発・運用」の四つと見るべきで、企画・調達は情シスのコア業務、開発・運用はベンダーを適切に活用すべき業務だ。

 4を行う場合は、コンサルやベンダーを利用するのは全く問題ではないが「丸投げ」は絶対にしてはならない。自分たちに不足している知見のみを外部リソースで補うようにすべきである。これができずにベンダーに丸投げする情シスは、経営者から見て価値の低い部門となり、またベンダーにすれば“カモ”である。

 最後に5.エンドユーザーのリテラシー教育が残ったが、実はこれが一番難しい。それは各会社にとって何が必要なITリテラシーかは異なるからだ。

 リテラシーは業務と密接なため、丸投げしようにも受けられるベンダーはほとんどない。だが、エンドユーザーのITリテラシーが向上することはシステムやアプリケーションを使った業務の大幅な生産性向上に直結する。経営判断やマーケティング、営業活動のスピードアップや他社との差別化にもつながる。さらにシステム構築においても無駄な機能を削減できるため、大きなコスト抑制にもなる。難しくとも情シスは取り組むべきだろう。

出典:日経SYSTEMS 2017年5月号 p.8
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