なにがそのチームにとって大切か?
イラスト:ハタパグ
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 「業務効率を大事に。ただし、初めて遭遇する事象はすぐエスカレーションしてチームの知見にする」

 舞子はこれをポリシーに掲げ、上司の衣笠とメンバー2人に話した。

 業務効率優先。情報システム部門のミッションにも謳われている重要テーマの1つだ。これは外せない。ただし、発足したばかりの自チームの現状を考えると、効率一辺倒ではまずい。初めての事象には、じっくりと向き合って分析・検討し、チームのノウハウにする必要がある。

 こうしてまた、1週間が終わった。

 土曜日。雨降りの週末。

 舞子はなんとなく目を覚まし、なんとなくコーヒーをいれ、そしてなんとなくファミコンのコントローラーを手にとった。ドラクエIVの続きをプレイする。冒険の旅もだいぶ進み、パーティーのメンバーも増えてにぎやかになってきた。

 ドラクエIVにはAI(人工知能)を利用した自動戦闘機が搭載されている。最後の章では、プレイヤーが指示できるのは主人公(勇者)のみ。他のメンバーは、プレイヤーが示した戦闘ポリシーにしたがって自律的に戦う。AIが、それまでの戦闘を通じて学習したモンスターの特性情報などを基に、「どのモンスターから攻撃するか?」「どんな呪文を使うか?」などを、自動で判断するのだ。

 ところが、このAIの性能がなかなか残念で、たびたびプレイヤーを悩ませる。

 「あんたたち!なんで、はぐれメタルを先に攻撃しないのよ!」

 「はぐれメタル」は、数あるモンスターのなかでも遭遇率が低いレアモンスターだ。レアなうえに、攻撃の難易度が高い。その名の通り、メタルをまとっていて守備力が高く、攻撃しにくい。動きも素早く、すぐに逃げられてしまう。

 ただし、難易度が高いゆえに倒した後に得られる「経験値」が、モンスターのなかでも群を抜いて高い。経験値を稼げば、それだけメンバーのレベルを早く高められる。難易度が高くても、出会ったら何が何でも倒しておきたいモンスターなのだ。

 それなのに、はぐれメタルと他のザコキャラが同時に出現した場合、メンバーはまず倒しやすいザコキャラから攻撃しようとする。

 「そんなザコは後回しでいいから、はぐれメタルを狙いなさいよ!逃げられちゃうよ」

 舞子の口調が厳しくなる。まるで部下をしかっているような雰囲気だ。そうこうしているうちに、はぐれメタルは逃げ出した!

 「ほら、言わんこっちゃない。もうっ、バカっ!」

 画面に向かって毒づく舞子。勢いで冷蔵庫の扉を開けて、レモンサワーの缶に手を伸ばした。

 「まったく、優先度と重要度を考えて仕事してもらいたいもんだわ…」

 舞子はふと窓の外を見やる。真冬の冷たい雨が、ベランダの手すりをつたっていた。

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