ムダな戦いは極力避ける
イラスト:湊川あい
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 9月第3週目。舞子が率いる購買システムチームは繁忙期の真っ最中。半期の締めのこの時期、検収や支払いなどの業務処理が集中し、それに伴うトラブルも多い。大量トランザクションによる、バッチ処理の遅延もたびたび発生。その都度、原因を調査して復旧対応をする。

 システム対応に輪をかけて骨が折れるのがユーザー対応だ。「パスワードを忘れてしまったのですが」「アカウントにロックがかかりまして」

 このような初歩的なものから「検収のやり方が分かりません」「締め処理の仕方を教えてください」など、操作方法の問い合わせも来る。「画面が見にくい」「発注取り消しの操作が分かりにくい」。こんなありがたいクレームまでいただく。

 メンバーは4人。とにかく目の前の仕事をひたすらさばいていくしかない。

 ようやく今日の仕事を追え、家にたどり着く舞子。既に22時過ぎ。閉店間際のスーパーで買ったから揚げ弁当を広げる。右手で割りばしを操りつつ、左手でドラクエIIIのカートリッジをファミコン本体に差し込む。さあ、冒険の続きだ。

 心も体もヘトヘト。何もする気が起きない。だが仕事だけで1日が終わってしまうのも、何だか切ない。そんな負けん気が、今夜も舞子をドラクエの旅に駆り立てる。

 勇者まいこたちは着々とレベルを上げ、腕っぷしも強くなってきた。先へ先へとコマを進めたいところだが、いちいち弱いモンスター(ザコキャラ)が出てきて、まいこたちの行く手を阻む。

 正直言って、勘弁願いたい。ザコキャラを倒したところで、たいした経験値にもお金にもならない。戦うのも逃げるのも時間の無駄。

 「そうだ! 『トヘロス』の呪文があったよね」

 ひざをたたく舞子。自分たちより弱いモンスターを寄せ付けなくする便利な呪文だ。これさえ唱えておけば、ザコキャラには遭わずに、次の町に楽に移動できる。

 「快適、快適」。おかげで思ったよりも遠くまで旅ができた。

 「ユーザーからの細々とした問い合わせも、もっとうまく減らせないかしら? そうすれば、もっと有意義に時間が使えるのに」。空になった弁当箱を見つめながら、舞子は現実世界のことをぼんやり考えた。

主な登場人物の紹介

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