炎の敵に「火炎系」の呪文は利かない!

 月曜日。出張明けの舞子は、いつもより1時間以上早く出社した。パソコンを立ち上げようとしたその時、部長の金沢から声をかけられた。

 「並木さん、ちょっといいかな?」

 「は、はい…」

 金沢の手招きに応じ、舞子は奥の応接室に向かう。溜まったメールボックスが気になるが、仕方がない。

 ソファで金沢と向き合う。細オモテでキリっとしており、細いフレームの眼鏡がよく似合う。若い頃は相当モテたに違いない。舞子は、目の前のナイスミドルな管理職の過去の姿を想像した。

 「購買システムのグループ会社への展開は、衣笠君と一緒に検討してもらっているよね?」

 「はい、先週さっそくナジミ倉庫を訪問し、林課長と堀口主任にドアノックをしてきました。課題はいろいろありそうですけれど…」

 さっそく本題を切り出す金沢。舞子はそのまま答える。「衣笠さん、私に丸投げですけどね…」と言おうと思ったが、やめておいた。

 「なるほど。ところで、ナジミ倉庫がうちの購買システムを使うとなった場合、システム運用チームはあと何人、必要かな?グループ各社に展開した場合、どれだけの運用体制とコストがかかるのかを見積もっておく必要があってね」

 淡々と伝える金沢はさらに言葉を続ける。

 「いま、並木さんのチームは3人だったよね。まもなく新入社員が加わるから4人か。グループ会社が1社増えたとして、何人追加すれば運用が回ると思う?」

 なかなか難しい質問だ。舞子は天井を仰いで考え出した。

 「そうですね…。いま、アリア本体の運用だけでもかなりアップアップですからね…」

 「いま、何でそんなに忙しいのか教えてもらえる?」

 「はい」

 舞子はありのままを説明した。バグがとても多くて、運用対処に時間がかかっていること。ユーザーからのクレームや問い合わせもすごく多く、バグの根本原因の特定や解決策の検討ができていないこと。現場の大変さを訴えた。

 「クレームがとても多いって言うけれど、どれくらい発生しているの?」

 金沢は質問した。必死に説明する舞子を、クールに見据えたまま。

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