「携帯電話をあらゆる場面で活用し、より生活や仕事を便利にしていきたい」というアイデアは、長らくモバイル業界関係者が描いてきた未来図だった。

 携帯電話の主軸がスマートフォンに移って高機能化が進むと同時に、社会インフラが整備されてくると、このアイデアは徐々に現実のものとなってきた。モバイル端末に決済機能を組み込むというアイデアもその1つであり、実際に日本国内では「おサイフケータイ」の名称で都市部を中心にインフラ整備が進み、非常に便利なものとして活用されている。

 従来までプラスチックのカードや現金を使って行っていた決済がモバイル端末の世界へとやってくることは、単にカードや現金をモバイル端末で置き換えるという以上の意味を持っている。小銭を持ち歩く必要がなくなるし、複数所持しているカードを1つの端末にまとめられるようにもなる。「インターネットに接続したり周囲のデバイスと通信できる」という特性を生かして、より高度で便利な決済方法やセキュリティを高める仕組みを導入したりするなど、新しいユーザー体験をもたらすきっかけになり得る。

 最近では「ユーザーが意識せずとも、サービスが終了した段階で自動的に決済が完了している」という配車サービス「Uber」の仕組みが注目を浴びている。これもモバイルを活用した決済である「モバイルペイメント(Mobile Payment)」ならではの特徴の一つといえる。

 この特集では、2016年2月末にスペインのバルセロナで開催されたモバイル関連の展示会「Mobile World Congress(MWC)」などでの取材を通じて得られた、モバイルペイメントの最新動向について解説する。

世界市場ではNFCがようやく定着か

 筆者は2011年からMWCで決済関連の最新トピックを追いかけている。当時は「(主に先進国での)非接触通信による携帯端末を使った決済とインフラの整備」「途上国など国民の多くが銀行口座を持たない地域(Unbanked)におけるモバイルを活用した決済や金融サービスの展開」という2つの対極的なテーマが同時進行で論じられていた。これは現在も同様だが、技術やインフラの急速な発展とモバイル人口の急増により、先進国と途上国での差異が縮まり、ボーダレスになりつつある印象を受ける。

 非接触通信、いわゆる「NFC(Near Field Communication)」と呼ばれる技術を用いた決済は、利害関係者の衝突が続いたことで端末への搭載やインフラ整備が進まないといった悪循環を招き、一時期は停滞が続いて「NFCは既に死んだ」と言われたこともある。

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