ミサイル発射に関する誤報から始まる本特集は、2008年の公開時に大きな話題を呼んだ。システムに関するさまざまなトラブルを扱う連載コラム「動かないコンピュータ」が象徴するように、日経コンピュータはITに関する負の側面を取り上げてきた。

 「うっかりミス」はシステムトラブルが生まれる大きな要因の一つだが、今も解決できていない。

 固有名詞、役職などは、日経コンピュータ掲載当時のままで掲載する。


 「ミサイル発射情報、当地域にミサイルが着弾する恐れがあります」。6月30日午後4時37分、福井県美浜町全域に緊急放送が響き渡った。

 原子力発電所が狙われたのか─―。屋外の防災無線58基からの「誤報」に、住民は一時騒然となった。

 誤報は、津波や地震、ミサイル発射などの緊急情報を全国の市町村に送る消防庁の「全国瞬時警報システム(J-ALERT)」を通じて伝わった。美浜町の職員が消防庁の指示でJ-ALERTの受信装置を修理した直後だ。

 原因は、動作確認に使った試験用の警報データの消去漏れだ。受信装置に残った警報が修理後に流れた。消防庁とJ-ALERTの開発ベンダーが作成した修理手順に抜けがあった。実はJ-ALERTは「訓練です」といった音声で始まる訓練報を流せる。これなら誤って放送しても影響は小さい。ところがなぜか本物の警報を使ってしまった。

ATM障害、電車の緊急停止も

 美浜町のケースは他人事ではない。パラメータ変更を忘れた、切り替え時の設定を誤った、運用操作を間違えた、といった「うっかりミス」によるトラブルが相次いでいる(写真1表1)。

写真1●うっかりミスの影響を受けたシステムや企業・サービスなどの例
住友信託銀行の本社ビルとATM、セブン銀行のATM、高等学校卒業程度認定試験の問題、気象庁が配信する気象データ、NTTドコモのiモード・メニュー
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表1●最近1年間に発生した「うっかりミス」による主なシステム障害
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 この3カ月だけ見ても、6月12日にはNTTドコモがiモードのメニュー表示順序を決める入札システムの金額表示設定を誤り、落札30分前から非開示にするはずの入札額を落札直前まで公表してしまった。6月2日に山形県で基幹ネットワークに異常が起きて100種類の行政システムが使えなくなったのは、通信機器の部品を交換する際の設定ミスだった。

 「8年ぶりの作業だったため、責任者の私を含め十分な確認ができなかった」。5月19日にATM障害を起こした住友信託銀行の岡崎健一システム推進部長は、悔しさをにじませる。原因はトラブル前日のシステム変更漏れだった。6月から900台の営業店端末を順次刷新するのに伴う事前作業だ。営業店端末の登録作業は正常に完了したが、勘定系システムに接続する端末数の設定値を増やし忘れた。新旧端末の並存期間は端末数が一時的に増える。にもかかわらず上限値を見直さなかった。

 5月12日には三菱東京UFJ銀行のシステム統合に伴う切り替え作業のミスにより、一部カードがセブン銀行で使えなくなった。同じ日に京浜急行電鉄の電車が緊急停止したのは、地震速報の受信装置の設定ミスでテスト報を本物と誤ったのが原因だった。

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