ITベンダーが事実上の一括請負でシステムを開発する従来のモデルでは、要件定義の不備や追加開発の費用をめぐるトラブルから逃れられない。ここにきて、ユーザー企業とITベンダーが協調できる仕組みをビルトインしたシステム構築の新たなビジネスモデルへの挑戦が始まっている。

日本ビジネスシステムズ 牧田和也副社長
一括請負をやめてから、顧客と一緒にゴールを目指せるようになった

 「今後、一括請負の受注は禁止する」。売上高223億円(2014年9月期)の中堅ITベンダー、日本ビジネスシステムズ(JBS)の牧田和也副社長は2014年4月、社内で宣言した。新規案件のうち、顧客が示すシステムの要件が不確かなものについては「〇〇までに□億円で完成させる」といった完成義務を伴う請負契約では受注しない、という意味だ。

 一括請負に代わって牧田氏が推進するのが、要件定義を含む上流工程から製造(コーディング)工程を含む下流工程までを、完成義務を伴わない準委任契約で行う「フル準委任」。これを前提に社内プロセスを見直し、標準契約書を改訂した。

 JBSはこれまで、一括請負での受注で失敗を繰り返してきた。「完成義務を負う契約では、ユーザー企業から当初の要件にない機能まで、まるでスーパーの特売でやる“いわし詰め放題”の要領で詰め込まれがち」(牧田氏)。例え上流と下流で契約を分離しても、実際には「予算が足りない」「契約書にはないが、当たり前の要件だ」と、追加費用なしでの開発を迫られた経験もある。

 もちろんJBS側も抵抗した。要件追加の責任がどちらにあるか、3カ月をかけて顧客と交渉して仕分けたこともある。一方、下請けとして大手ITベンダーと請負契約を結んだ結果、追加要件を押しつけられて損害を出したこともある。

 こうして赤字化したプロジェクトの現場は疲弊し、JBSを辞める社員も相次いだ。

 「一括請負に代表される伝統的なシステム構築(SI)モデルでは、限界がある」。こう考えた牧田氏は、一括請負からの決別を決断。「リスクバッファの分だけ割高な一括請負より、準委任の方が安く付く」などと顧客を説得した。

 実際にフル準委任の開発を経験したユーザー企業からは、「追加開発に関する責任の所在をめぐるいざこざがないのは、健全だと思う」との評価をもらったという。もちろん、ポジティブな評価だけではない。あるJBSの顧客は、同社の方針に理解を示しつつも、「マネジメント主体がどちらになるかを含め、当分は手探りになるだろう」と本音を語る。

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