この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。今回は「ひとりよがり文章病」の治療である。ITを活用したビジネス企画の仕事では自分の考えを上司や上長に説明し、理解してもらう必要がある。特に説明する内容が相手にとって新しいことを企画する場合は、なおさらである。

 このような「相手にとって新しい概念をともなう」企画の仕事で重要なのは、自分が理解していることを他人に説明するのではなく、他人が理解できるようかみくだいて説明することが必要である。上司や上長などの「他人」に理解させるには、ひとりよがりではダメなのだ。

 新しい概念をともなう企画を説明するための文章では、このようなことが欠かせないが、これができていない文章が多い。このような文章は上司の不満につながり、仕事の評価も低くなる。今日の患者さんも、そういう人だった。

乗鞍聖子(のりくら せいこ 仮名 34歳 女性 課長補佐)の症例

 乗鞍氏の相談は、上司向けの文章に関することだった。話を聞いてみると「自分の考えた企画を上司が理解してくれない」、「自分の説明がダメと上司に言われた」とのことで、乗鞍氏はかなり自信をなくしているようだった。

 乗鞍氏は34歳で、北陸の地方銀行R行のITビジネス企画課で、課長補佐としてITを活用した新規ビジネス企画を担当している。乗鞍氏はR行に入社後、最初にシステム部に配属になり、システム設計を10年担当した。

 2年前に企画部に異動し、新規ビジネスの情報収集をする仕事を担当、3か月前から新設されたITビジネス企画課で仕事をするようになった。ITビジネス企画課はITを活用して地方銀行の新たなビジネスを作り出すための組織である。

 現在、地方銀行では、地方人口の減少や高齢化のため、預金、融資など基幹業務の将来が問題になっていた。そこで、R行では新しい地方銀行業務を創造し、成長させていく必要があった。

 乗鞍氏の仕事は、地銀の新しいビジネスを考えて企画することである。そこで、乗鞍氏はITビジネス企画課で仕事を始めてから、様々な情報を収集し、新しいビジネスの可能性を考え、ITを使った新しいビジネスのアイデアを考えた。

 早速、部下の槍岳氏と新しいビジネスのアイデアに関する説明資料を作り、ITビジネス企画課長に説明した。乗鞍氏は部長に褒められると思っていたが、部長の反応は良くなかった。

 「言いたいことは分かるが、資料の内容が分かりにくい。読んでもすぐに頭に入ってこない。新しい概念をもった企画を説明する際には、読み手できるだけ早く理解できるような配慮をすべきだ。これからもこんな資料ではこの仕事は向かないと思うよ」

 部長にそう言われたとのことだった。「どのような資料を作って説明をすれば部長が納得するのか分からない。それをぜひ知りたい。自分は企画の仕事をやりたい。自分に必要な文章治療をして治してほしい」

 乗鞍氏が文章治療室に来られたのは、こういう経緯だった。

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