この連載では、仕事で勝てる「ビジネス文章力」をテーマにしている。良いビジネス文章を書きたいなら、単に礼儀作法を知っているだけではダメである。ビジネススキルを向上させること、これが良いビジネス文章を書くための条件である。

 今回は「高主観症」の治療である。システム企画の仕事では複数の候補製品から選定をすることがある、たとえば、新しいソフトウエアを導入する場合、候補になる複数のソフトウエアから最適な製品を選ぶということである。

 このような「複数候補から一つを選ぶ」仕事で重要なのは、自分の主観的な判断で選ぶのではなく、できるだけ客観的に「そのソフトウエアを選定する理由」を説明することである。上司や上長などの「他者」を納得させるには主観ではダメなのだ。

 製品選定をするための文章では、このようなことが欠かせないが、これができていない文章が多い。このような文章は上司の不満につながり、仕事の評価も低くなる。今日の患者さんも、そういう人だった。

八岳(やだけ)慎太郎(仮名 36歳 男性 課長代理)の症例

 八岳氏が文章クリニックに来たとき、ふさぎ込んでいる感じだった。相談内容を聞いてみると、「情報システム部長から厳しいことを言われた。自分はもうダメかも知れない」とかなり落ち込んでいる雰囲気だった。

 八岳氏は36歳で、中堅自転車メーカーP社の情報システム部門の課長代理としてシステム企画の仕事を担当している。P社に入社後、システム設計を担当し、3か月前からシステム企画の仕事を担当するようになった。

 現在、P社ではシステム開発の品質が問題になっていた。プログラム開発工程やテスト工程で要件定義漏れ、ミスが多くプログラム修正やテストへの影響が膨大になり、プログラム修正が漏れたり、テストケース不足が品質が悪化している。

 そこで、P社の情報システム部長は、「要件定義管理ソフトウエア」を導入することを決めた。要件定義管理ソフトウエアとは、上位要件、下位要件、さらに下位の要件など要件同士の上下関係を管理するソフトウエアである。

 要件同士の関連だけでなく、要件とプログラム修正箇所、テストケースなども関連付け、要件変更、要件削除があった際に、関連する下位要件、プログラム修正箇所、テストケースの影響をチェック可能とするため要件管理ミスを排除できる効果がある。

 八岳氏が指示されたのはこの「要件定義管理ソフトウエアの選定」である。八岳氏は早速ソフトウエア製品の比較表を作成し、情報システム部長に説明したが、反応は良くなく、厳しいことを言われたらしい。

 「君の評価表は主観的で客観性が弱い。点数をつけても主観的な数字では客観的にならず、選定の説得力がない。事実を積み上げないと主観は排除できない。そのような比較表を作るべきだ」

 情報システム部長にそう言われ、困っているとのことだった。「どのような比較表を作って説明をすれば情報システム部長が納得するのか分からない。それをぜひ知りたい。自分は企画の仕事をやりたい。自分に必要な文章治療をして治してほしい」

 八岳氏が文章治療室に来られたのは、こういう経緯だった。

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