日本財団が約100億円を拠出して設立した「パラリンピックサポートセンター」。2020年に五輪とともに東京で開かれるパラリンピックの成功に向けて、運営がぜい弱とされる各種競技団体の活動を支援する。会長に日本パラリンピック委員会の山脇康委員長が就任するなど、五輪関係者が寄せる期待も大きい。

 このセンターのオフィスのデザインを任されたのが、世界的な広告賞「カンヌ・ライオンズ」などの受賞履歴があるワン・トゥー・テン・ホールディングス(1→10)というクリエイティブスタジオだ。ソフトバンクのヒト型ロボット「Pepper」では企画段階から開発に協力したほか、日本IBMが企画した人気SF小説「ソードアート・オンライン」の世界をVR(仮想現実)技術で再現する企画および制作などの実績でも知られる。

 最先端テクノロジーによるクリエイティブの高度な“使い手”は、スポーツをどう変えたいのか。澤邊芳明代表取締役社長CEO(最高経営責任者)に話しを聞いた。同氏は公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のアドバイザーでもある。

「i enjoy!」の姿勢で

写真●ワン・トゥー・テン・ホールディングス(1→10)の澤邊芳明代表取締役社長CEO(最高経営責任者)
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パラリンピックサポートセンター(パラサポ)の空間は、中央にオープンカフェがあるなど斬新ですね。まるでシリコンバレーのスタートアップ企業のオフィスのようです。

 コンセプトは「i enjoy!」なんです。障害があるなしにかかわらず、アスリートがスポーツに夢中になる原点は楽しいからではないでしょうか。「やってる私たちは楽しいんです、だから観るみなさんも一緒に楽しんで下さい」。そんなメッセージを込めて、それに従ってエンジョイできる空間を作り上げました。

 障がい者スポーツだからといって、特別なスポーツではないんです。競技団体やアスリートのみなさんがエンジョイする気持ちで斬新なアイデアを量産してくれれば、きっとパラリンピックは特別なものではなくなる。そしてまたタブーもない世界にもなるはずだと信じています。

 前回ロンドンで開かれたパラリンピックでは、「スーパーヒューマン」といううたい文句で盛り上げを図りました。強い障がい者をアピールし、確かにそれは成功を収めました。しかし日本人のメンタルでそのコンセプトを引き継ぐと、「やってる方が頑張ってるんだから、観ている皆さんも“お涙を頂戴”」という、よくありがちな上から目線のような妙な方向に行ってしまう気がしました。

 楽しいという共通キーワードなら、アスリートと観客が同じ高さの目線でパラリンピックに参加しあえる。そう思うんです。

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写真●日本財団が都内に設立した「パラリンピックサポートセンター」のオフィスのデザインも任された
出所:ワン・トゥー・テン・ホールディングス

テクノロジーの力で人の身体能力を拡張し、障害の有無を問わず楽しめる「超人スポーツ」に注目が集まっています。テクノロジーでスポーツはどう変わるのでしょうか。

 私は超人スポーツ協会の理事をしていますが、VRの登場がスポーツの世界を大きく変えるとみています。1→10でも早くからVRに注目しており、関連技術の開発に注力してきました。例えば4月にリリースした、高速で人体の3Dモデリングデータを生成するスキャンシステム「ANATOMe」が一つです。人体の関節22個所を自動的に読み取り、VRの世界で自由自在に動かせる自分のボディーを数分で作り上げる技術です。

 スポーツにおけるVRの価値は、「観る」と「やる」の断絶を埋めることにあります。これまでプロスポーツの観客は常に傍観者であり、自分事ではありませんでした。当然ですよね、自分がサッカー場のピッチに立てるわけではありませんから。しかしVRをうまく使えば、スタジアムに入り、競技そのものに関与できるようになる。そう、この関与というキーワードこそが、これからのスポーツで注目されるはずなんです。

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