8月に開催されるリオ五輪を直前に控え、ネットを使って今までにない形でスポーツ情報を消費者に届けようと試みる動きが相次いでいる。中でもスポーツ関係者の間で話題を呼んでいるのが「運動通信」という新興媒体だ。仕掛け人は、2013年設立のベンチャーであるリムレットに参集した精鋭たち。大手広告代理店時代のメディア開発の実績で知られる人物や、スポーツビジネスの最前線で勝負してきた人物ばかりである。

 スポーツ関係者にとっては消費者との日常的な接点を通じてビジネスを生める場になり、消費者にとってはスポーツに心が揺さぶられる場になる――。新しい姿のスポーツメディアの醸成こそが、運動通信が目指すゴールだ。2020年東京五輪に向けて、ネットの力を生かしてスポーツに新しい“熱狂”の渦を生み出せるか。挑戦はまだ始まったばかりだ。

選手の生き様などに触れられる点が新しい

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写真●運動通信を立ち上げた面々。左が黒飛功二朗リムレット代表取締役

 「既存のネット上のスポーツメディアは、いわば高感度なスポーツファンを狙ったものばかり。大型商業施設ららぽーとのような、誰が訪ねてきても心が満たされる空間がネット上にないのはおかしい。そう考えた」。リムレットの代表取締役であり、関連会社として運動通信を立ち上げた黒飛功二朗氏は、新メディアが生まれた背景をこう話す。

 コンセプトは「CRAZY FOR SPORTS」。「8万人の目の前でPKを決められる人間が、女好きでもいい」「傷ついた少年の勇気になるホームランを打てる人間が、借金を抱えていてもいい」「すべてを犠牲にして、立ち向かった人間に、つまらない常識なんかいらない」「瞬間に生きることを選んだ人間の美しさに熱狂せよ」——。専用のスマートフォンアプリを立ち上げると、こんな刺激的な紹介文が目に飛び込んでくる。

 単に試合速報や結果を垂れ流すのではなく、選手の生き様などに触れられるコンテンツを量産。消費者がエモーショナルに、スポーツに対して日常的な感心を持ち続けられるようにしたいのだという。「ららぽーと」と例えるように、どこかのチームのファンだったり特定のスポーツに夢中になっている人でなくても、老若男女が楽しめる味付けにとことんこだわっていく。媒体名で「運動」をうたったのも、間口の広さをアピールしたいからだった。

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写真●様々な競技を網羅しつつ、一つの競技をさまざまな粒度で情報提供するのがポイントだ
出所:運動通信

 既にコンテンツ提供元としてスポーツ専門雑誌など40社と契約。コンセプトに合う記事を調達し、1日当たり300本を掲載している。6月には動画コーナーを新設し、1〜2分のスポーツの醍醐味に触れられる映像もラインアップに加えた。今後は社内に独自の映像制作チームを設け、スポーツ専門誌と組み運動通信専用の動画コンテンツを強化していく方針だ。7月にはオリジナル連載記事もスタートさせた。

 8月7日からは朝日新聞と朝日放送の協力を得て、高校野球の動画を約300本も閲覧できる「バーチャル高校野球」コーナーを新設する。甲子園球場で全国高校野球選手権大会が開幕するのに合わせ、終わった試合のダイジェスト動画や見所をまとめたハイライト動画、地方大会の決勝戦のダイジェスト動画などを大会期間中順次追加し、楽しめるようにする。全国高校野球選手権大会の主催者である朝日新聞社とテレビ中継を担当する朝日放送は、全試合をスマホなどにライブ配信する「バーチャル高校野球」を共同運営しており、そのコンテンツを活用して実現する。

 「既に多くのスポーツファンの支持を得つつある運動通信を通じて、今まで縁が薄かった人々にも高校野球との接触機会を増やせる」(黒飛代表取締役)。コンテンツを提供する朝日新聞と朝日放送側は、運動通信が自社のライブ配信サービスへの強力な導線になる期待を寄せる。ダイジェスト動画で興味をまず持ってもらい、リアルタイムに楽しむ人が増えればファン層の裾野が広がる。

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