音楽業界がビッグデータ革命に揺れている。定額で聴き放題のストリーミング(逐次再生)型サービスがいよいよ日本でも本格普及。その魅力は、膨大なカタログから消費者一人ひとりにその瞬間のお薦めの曲を提案できる点にある。そのためには消費者の好みを学び、楽曲1曲ずつの「個性」も把握し、両者をマッチングさせる必要がある。よりどころになるのがデータだ。配信会社はライバルより少しでも多く曲調や消費者の行動状況に関するデータを集め、さらに「深く」「広く」分析しようとしのぎを削る。その裏側を、音楽専門のビッグデータ分析会社である米グレースノートの日本法人でCTO(最高技術責任者)を務める渡辺泰光取締役や、米国本社の共同創設者であるタイ・ロバーツCSO(最高戦略責任者)が数回に渡ってひもといていく。
写真●手作業による選曲を手助けするキュレーションツール
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 いくらメタデータが進化しても、音楽配信会社は全自動で楽曲をレコメンドしたりプレイリストを作成したりしているわけではない。膨大な楽曲カタログを運用するに当たり、多くのリソースを費やすことを余儀なくされているのが実情だ。特に人的リソースの負担が大きい。

 英国のエンターテインメント・リテーラーズ・アソシエーションによると、ストリーミング(逐次配信)型配信を手がける仏Deezer(ディーザー)では、社員の25%が日々の選曲作業に追われているという。もちろんメタデータを基にレコメンドするアルゴリズムを活用しているものの、最終的には人手にも頼っている。

 その事実は、今年に入って多くのストリーミング型配信がラジオパーソナリティやDJの起用を発表したことからも裏付けられる。米アップルが英国の人気ラジオ局「BBC Radio 1」のゼイン・ロウを獲得したことは象徴的だった。コンピューターによる全自動によるレコメンドは難しく、感覚的な嗜好がデータ駆動なアルゴリズムと同等の価値がいまだにあることを物語っているといえよう。

 世界の主要な配信サービスが競い合っているのは、音楽のエキスパートが介在する「ミュージック・ディスカバリー」(新たな音楽との出会い)だといえる。人手による選曲作業でレコメンドやプレイリストを磨き上げ、競合他社と差異化しようと試みている。消費者の側も、独自に提供するプレイリストのラインアップに魅力を感じてストリーミング型配信を契約することが多く、新しい音楽消費の形として浸透しつつある。

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