「シリコンバレーで日本人が嫌われている。日本企業の評判が悪い」という記事がある新聞に掲載されました。これに友人が反応してこんなことを言いました。

 「こんなのずっと昔から言われているのに、何を今更言っているんだろう。それにしても10年前からずっと同じ光景なのはどういうこと? どうして変わらないんだと思いますか。楠さんも昔、そんなことをコラムに書いていましたよね」

 私も毎年何社も米国企業を訪問していますから、日本企業が嫌われているなんて言われるとぞっとします。今日会ったあの人たちも、ミーティングが終わった後で「もう来るな!」と思ったのかもしれません。私の場合、お会いする人は以前にもお会いしている人が多く、そういう人たちは私がお願いすると忙しい時間をやりくりして時間を作ってくれます。嫌われていないことを祈るしかないのですが。

 確かにこの件は、ずっと以前からある大問題です。私がニューヨークの子会社を担当していた当時、ニューヨークの研究員にとっての大問題は東京からくる役員のアポ取りでした。

 「えーっと、1週間ぐらいニューヨークに行きたいからさ、アポ入れてくれる? 1日2件ぐらい、証券会社とかがいいかな。あとニューヨーク証券取引所ね。それから〇〇でディナーしたいから、だれか一緒に行く人探しといて」

 こんな感じのリクエストが毎月何人分もやって来たら、たまったものではありません。とても調査どころではなくなってしまいます。何よりも問題なのは、研究員がせっかく培った人脈をぶっ潰してしまうことです。「あの人、いったい何をしに来たの?」というミーティングを何度も繰り返したら当然です。だから彼らの苦情を聞いて、社内での評判が悪くなるのを承知で「役員のアポ取り禁止令」を出したものです。

 何しろ、何十年も現場しか知らない人間がいきなり役員になるわけです。IT会社に何十年もいたって、マイクロソフトやオラクルと付き合いがあるわけではありません。ましてAWS(Amazon Web Services)なんてぜんぜん知りません。だから海外出張といっても、知り合いなどいるはずもありません。しかし、日本の顧客とのミーティングやら、フォーラムでの講演やらで、いっぱしのことを言わなければならないのです。役員なのですから。

 こんなIT音痴みたいな人間が米国で1週間過ごしてくると、何を見たってすごいインパクトを受けること請け合いです。だからお会いする米国企業の方には申し訳ないのですが、日本的事情からいうとすごく効果的な出張なのです。それもあくまで程度の問題ですが。

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