数年前のことです。ある中堅金融機関でCEO(最高経営責任者)を務めるTさんと懇談しているときに、こんなことを言われました。

「やっぱり、体力があるSIベンダー(システムインテグレータ)じゃないとダメだと思う。うちにはITをきちんと理解している人材なんて、いないからね。特に何かトラブルが起きたときに、とんでもないことになってしまうと困るんだ」

 SIベンダーの体力は比較的よく話題に上ります。最も体力があるのはいわゆるメーカー系、メインフレーマの4社(NEC、富士通、日立製作所、日本IBM)です。民間の案件ではあまり耳にしませんが、公共案件ではNTTグループの体力が群を抜いています。NRI(野村総合研究所)は残念ながら「体力がありますね」とほめられることはあまりありません。

(提供=123RF)

表に出てこないSIベンダーの体力

 CEOのTさんが言うように、SIベンダーにとって体力は重要です。最も重要なコアコンピタンスと言えるかもしれません。

 「御社の強みは何ですか」という質問に対して「根性です」と答えるようなら、そのベンダーは体力に自信があると捉えていいでしょう。「あそこも最近やばいんじゃないの。体力なくなってきたよね」などと言われたら、それは明らかに悪口です。SIベンダーは自社の体力がしっかりしていることを何が何でも顧客に伝えなくてはなりません。

 しかし考えてみると、体力という言い方は分かるようでよく分かりません。体力があると何ができるのでしょうか。みんなが体力がある、ないと言うからには、何らかの実体が伴っているはずですが、どうも抽象的で、口にする人によって内容が異なります。

 AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)にしろグーグルやマイクロソフトにしろ、最近勢いを増しているクラウドベンダーの強みはソフトウエア開発力です。加えて先進性があります。こうした開発力や先進性はアマゾンやグーグル、マイクロソフトの公開資料から読み取ることができます。各社のマーケティング資料には新しい機能や、それらを活用したイノベーションのことが山ほど書かれていますし、財務諸表には注ぎ込まれたソフト開発費用の膨大な金額が記載されています。

 これに対し、大手SIベンダーの体力がどの程度かは、公開資料のどこを見ても分かりません。富士通や日立製作所のWebサイトに「当社の体力」などと書かれているわけではありません。コアコンピテンスには違いないとしても、知る人ぞ知るもの。それがSIベンダーの体力なのです。

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