これまでサムスン電子のひとり勝ちだった韓国のスマートフォン市場で、米アップルの猛追が始まっている。言うまでもなく、iPhone 6/6 Plusの発売によるものである。さらに、iPhone 6/6 Plusの加入者奪い合いによって、ある事件が韓国で発生した。「アシックス大乱」と呼ばれているという(関連記事:韓国で発生した“iPhone 6大乱”、違法な加入者奪い合いに規制当局が激怒)。

 “大乱”とは少々大げさなとも思うが、要は、10月1日に韓国で始まった奨励金を規制する端末流通法に反する販売がiPhone 6で行われたという。それに対して、規制当局がキャリアに対して調査を実施したり、刑事告発をちらつかせたりして規制に乗り出した。

 法律に反した行為であったため、こうした規制は当然のことだ。とはいえ、この端末流通法では、販売奨励金の金額に対して具体的に上限額を設けて規制している。独占企業体ではなく、自由競争している民間企業に対して、規制当局が事実上、値引き額の上限を定めたというわけだ。こうした規制は、競争が激しい資本主義経済においては、なかなかうまく機能するものではないだろう。

 今回は、目立たぬよう深夜販売という形で違法な販売が行われたようだが、それでも多くの人がSNSなどで情報を流通させた。それで規制当局が激怒したというわけだが、であるならば、次はもっと目立たぬよう水面下で違法行為が行われることになりはしないだろうか。人々が携帯電話を購入できる金額に不公平があることから端末流通法が作られたというが、“裏”販売がはびこると、もっと見えない形で不公平を助長することになりかねない。

 もっとも、販売奨励金の規制に関して“妙案”があるかといえば、なかなか難しいのが現実だ。

 日本でも、高額な販売奨励金を原資にしたキャッシュバックが乱発されるなど、問題は山積である。総務省が委員会などを作って長い間、規制案を検討してきたが、切り札になるかと思われたクーリングオフ制度は端末を対象から除外する方針となり、キャリアに対するSIMロック解除の義務化に関しても、実施前から「骨抜きになるのでは」という懸念が広まっている(関連記事:「2年縛り」や販売奨励金で骨抜きの懸念、SIMロック解除の実効性に課題)。

 携帯電話の人口普及率が100%を超える中、キャリア間の加入者獲得競争はますます激化している。健在な競争はもちろん歓迎だが、“裏”販売がなされたり、お札が飛び交ったり、分かりにくい契約形態で消費者をケムに巻いたりすることは、適切な仕組みを作って規制できるようにしたいものである。