筆者らはスマートシティを実現する上での「多種多様性への対応」「信頼性への対応」「都市の成長,長期維持への対応」等の要件を満たすための,スマートシティ向けIT基盤を開発している.本稿では上記のスマートシティ向けIT基盤を適用するスマートグリッド環境において異なる目的・業務のシステムもしくは異なる事業者のシステムとの連携によるユースケースと要件を挙げて,これらに対応する異種システム連携機能について述べる.本異種システム連携機能は,各々異なる標準規格に準拠する個々の制御システムと連携するための制御系連携と,異なる事業者等のセンタシステム間で連携するためのセンタ間連携にて構成される.特にこれらの機能の開発時および実践時に直面した課題への対応を通じて得られたプラクティスを紹介する.

1.はじめに

 近年,低炭素化社会の実現に向けた再生可能エネルギーやEV(Electric Vehicle)等の大量導入に伴う電力の安定供給や効率的な発電,需要予測を含んだ「スマートグリッド」に関する取り組みが進められている.最近では,電力のみならずエネルギー,水,交通等の都市インフラすべてをスマート化する「スマートシティ」構想が注目を集めており,日本も含めた複数の国々で実証実験が行われている[1].スマートシティを支える,電力,交通,水等の社会インフラシステムには,従来からの安定供給,安定稼働だけでなく,「多種多様性への対応」「信頼性への対応」「都市の成長,長期維持への対応」も求められる.筆者らは,これらの要件を満たすためのスマートシティ向けIT基盤の開発と,スマートシティの実現と拡大に向けた上記基盤の提供を進めている[3].スマートシティ向けIT基盤はスマートシティの社会インフラにかかわるさまざまな機器や設備,社会インフラの提供運営のためのアプリケーションをつなぐための基盤である.

 本稿では特に,上記のスマートシティ向けIT基盤の適用先として取り組んでいるスマートグリッド環境でのソリューションにおける,異なるシステム間の連携が必要となる場合のユースケースと要件を挙げて,これに対応するためのスマートシティ向けIT基盤の異種システム連携機能の開発と実践における課題と対応について紹介する.

 以降の章では,第2章にてスマートシティ向けIT基盤のアーキテクチャと主要機能の概要を述べる.第3章にてスマートシティ向けIT基盤の適用事例の1つとして,スマートグリッド環境におけるユースケースを述べる.また本ユースケースにおける基盤側の要件と対応機能である異種システム連携機能について述べる.第4章にて第3章にて述べる異種システム連携機能の実装上の課題と対応について述べる.第5章にて第3章にて述べるユースケースへの異種システム連携機能の適用と課題について述べる.最後に第6章にてスマートシティ向けIT基盤および異種システム連携機能の今後の課題と展開方針について述べて,本稿のまとめとする.

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