デマンドレスポンスとは,電力の需給バランスの維持のために電力供給者側と需要家側が協力して電力を調整する方式で,日本でも急激に取り組みが進んでいる.筆者らは,経済産業省の横浜スマートシティプロジェクトに参画し,複数のビルを相手にデマンドレスポンスの実証実験を進めている.本論文では,実証実験の概要と結果について紹介するとともに,大規模な社会実証実験を通して得られた知見を述べる.

1.はじめに

 近年,ガスタービン発電システムや太陽電池,大型蓄電池などの分散型エネルギー技術の進歩が著しい.このような分散型エネルギー技術と情報処理技術に裏打ちされたスマートグリッドの発達により,電力における規模の経済原理が崩れてきており,供給者,需要家の一元的な線引きが困難になり,世界的に電力自由化の流れが加速している.

 日本においても,東日本大震災以来,次世代に向けたエネルギーシステムに関する議論が続いており,2014年2月には,家庭向けを含めた電力小売事業への参入を2016年に全面的に自由化する電気事業法の改革案[1]が閣議決定されている.小売全面自由化の後は,需要家側も,災害時の対策のために導入した自家発電設備や蓄電設備などを活用し,自ら電力を販売するプロシューマ化が進むことが予想される.

 電気を安定的に供給するためには,需要と供給が各時間帯でバランスしている「同時同量」が大原則で,既存の需要を削減することで発電と同様の価値があり,これらの電力削減量は,ネガワット(負のワット)と言われている.電力供給の逼迫時に,電力会社側で発電量を増やさず,代わりに需要家側に受電電力削減協力を要請してネガワットを創出することで電力需給のバランスを維持する仕組みを,デマンドレスポンス(Demand Response)と称する.

 筆者らは,後述する横浜スマートシティプロジェクトの一環として,デマンドレスポンス(以降DR)の実証実験にかかわっており,複数のビル群をターゲットとした大規模な社会実証実験を進めている.本論文では,多数のステークホルダが同時参加する大規模な社会システムの機能検証の難しさなど,実証実験を通して得られた知見を中心に紹介する.

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