従来のスタッフスケジューリング研究においては,休暇日の考慮や禁止勤務シフトパターン等の制約条件を回避したスタッフの組合せを高速に算出する方法が提案されてきた.しかし,各スタッフにはスキルレベルの差があるため,組合せによって生産性に大きな差が生じる.コンタクトセンタ業務等のサービスビジネスではスタッフのスキル把握が曖昧なまま人員配置がなされ,十分な生産性が得られていないという問題があった.本研究では,スタッフの業務ログからスキルレベルを自動判定し,最適人員配置を算出する方法を提案する.本方法では,まずスタッフの業務モニタリングログを分析し,スキルレベルを算出する.この実測スキルレベルより,複数の人員配置計画それぞれの単位時間ごとの生産性を算出する.さらに,生産性と人件費から,費用対効果の指標となる生産効率を定義する.この生産効率が最大となる人員配置を,最適人員配置計画として算出する.コンタクトセンタに勤務する6名のスキルレベルを判定し,4つの勤務シフトを構成する組合せに9種類の時給パターンを割り当てた3,240配置の生産効率を算出したところ,配置により生産効率に約1.6倍もの差がつくことが明らかになった.これにより,提案方法が有効である見通しを得た.

1. はじめに

 サービスビジネスへのITの適用が広がっている.ITによって,単に業務量を自動化するというフェーズから,さまざまな情報を収集することで業務量を予測し,適切な人員を配置するというフェーズにと移行しつつある.

 一方,ITは,ユビキタスデバイスの低価格化,汎用化などにより,幅広く,多種多様な実世界の情報を容易に収集可能になりつつあり,実世界情報を収集・分析する技術が進んでいる.たとえば,加速度センサや画像センサを着用して人間の行動をロギング/モニタリングする研究[1], [2], [3], [4]や,自動車に搭載されたセンサから位置情報,速度情報を吸い上げ,地図情報にマッピングし,渋滞予測情報に変換して,自動車に展開するという研究[5], [6]などである.筆者らはこのような実世界情報処理パラダイムをコンセプトに,現実社会のさまざまな効率化を推進するプラットフォームの研究を推進中であり,映像ログやPCの操作履歴情報といった業務ログから,オフィスの人員のモニタリングをする技術を研究してきた[7], [8], [9].

 このように,実世界の情報を収集して分析する方法は開発されてきている.分析された結果に基づき,実世界を制御する方法も提案されてきているものの,改善の余地が大きい.サービスビジネスでの制御分野で最も重要な要素の1つである人員配置について,従来は,業務量の予測を行い,必要人数を算出することが行われてきた[10], [11], [12], [13], [14].たとえば,インバウンドのコンタクトセンタでは,架電の実績から,時間帯別に着信数を予測し,着信数を処理するのに必要な人員数を割り出すという方式[10], [11]を採用していた.

 しかし,このような業務量の予測だけでは,現場の人員配置には活用することが難しい.たとえば上記のコンタクトセンタでの人員配置の場合,実際には,人員のスキルや業務に対する適性によって,処理可能な着信数が大幅に異なり,スタッフが不足し,あるいは,人員過剰になってしまうためである.スキルを自己申告で入力させる従来研究もあるが,実際には,スキルは徐々に変化し,あるいは業務によって適性が異なるなどのため,正しい情報で人員配置ができないケースが多くなっている.

この先は会員の登録が必要です。有料会員(月額プラン)は初月無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら