本稿は,「よりお客様満足度の高い商品・サービスを提供していく」という重要課題に対し,創業以来経営理念として受け継がれているお客様視点を軸足とし,従来からあるコンタクトセンタの役割を超えて実際にお客様の声を具現化していくために取り組んださまざまな事例の紹介である.すべてのお客様接点部門で入手した情報を集約し,重要度,緊急度,事業カテゴリなどさまざまな切り口で声を分析し関係部門への問題提起,経営への情報共有と意思決定を仰ぐという一連のプロセスにおいて,コンタクトセンタがどのように経営に貢献できるかをまとめる.

1.はじめに

1.1 共通の課題

 よりお客様満足度の高い商品・サービスを提供し続けていくことは,業界を問わず事業活動を営んでいく上で共通の重要課題である.

 昨今,食品偽装や原発事故などの観点から食の安全性が問題となり,また化粧品による肌トラブルでは初期対応の遅れが問題になるなど,今後経営に対する要求が一層強まっていくことが予想される.

 特にB to Cの企業では,お客様満足度の高い商品・サービスを提供しても,さらにその先を求めるお客様のニーズが直接的に伝わってくる.したがって,お客様の声に耳を傾けるだけではなく,受け止めたその声を素早くどのように具現化していけるかということは,どの企業にも共通で永遠の重要な経営課題である.

1.2 ファンケルでの位置付け

 一般的に企業内におけるコンタクトセンタの位置付けの低い企業がまだまだ多いと言われている.「お客様第一主義」と謳いながらも,お客様ニーズを反映していく取り組み自体が容易でないということにほかならない.

 当社はこの重要課題にどのように取り組んでいるか.化粧品による皮膚トラブルが社会問題となった時代,世の中の女性の「不」を解消すべく立ち上がった.トラブルの原因であった保存料など必要悪とされていた成分を一切排除した無添加化粧品の誕生である.以降,世の中の「不」を解消していくことが事業ドメインとなった.

 常に根幹にあった思想は「すべての判断基準はお客様視点である」ということである.一般的な「お客様第一主義」とは異なり,お客様の声に徹底的に耳を傾け,お客様ニーズの具現化に努めるという事業活動が早くから根付くことになった.

 2013年1月,創業者池森が経営に復帰することになった.改めて「創業の精神に立ち返り,すべての基準をお客様視点とする」という経営理念とともに,コンタクトセンタにおけるお客様対応と,そこに集まるお客様からの声を活かすための取り組みは,今まで以上に経営にとって重要なものとなった.

1.3 コンタクトセンタの第一意義

 当社は研究,開発,製造,販売,アフターフォローを自社で完結し,複数の販売チャネルを有する.したがって,さまざまな販路で購入したお客様からの声がコンタクトセンタに集約される.

 商品力や安全性は支持されている一方,モノの良さや価値の伝達はまだまだ不十分である.そんな中,商品力や広告宣伝だけでは創造し得ないブランドへの信頼感や愛着感の醸成に,コンタクトセンタが少なからず寄与していることも事実である.創業当時より,そこまでする必要があるのかというほどにきめ細かく丁寧な接客応対を実施してきた結果と考える.

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