北九州スマートコミュニティ創造事業では,ハードウェアやソフトウェアの技術的な取り組みに加え,ダイナミックプライシング(変動電気料金)やインセンティブプログラムなどの制度面での取り組みを行っている.特にダイナミックプライシングは,利用者が支払う実際の電気料金を地域の電力需給の状況によって変動させるという本格的な実証実験である.地域の住民に実験に参加してもらう上での苦労話,実験に対する参加者から寄せられた感想,プロジェクトで収集される各家庭や事業所の電力利用などのデータの活用など,お話をお伺いした.

■スマコミ実現の素地があった北九州

日高:荒牧さん,岩野さん,今日はお忙しい中,ありがとうございます.今回は北九州のスマートコミュニティ創造事業というタイトルでデジタルプラクティス論文を執筆いただきまして,ありがとうございます.

 今回,日本で4地域,それぞれ特色がある地域が経済産業省の実証として選ばれているのですけれど,北九州市が選ばれたということには歴史的な,あるいは地理的な,社会的な背景があると思うのですが,その点に関してお話を伺いたいと思います.

荒牧敬次氏
技術研究組合 北九州スマートコミュニティ推進機構 専務理事. 日本アイ・ビー・エム(株)事業部長から,2011 年に北九州市環境局へ出 向し北九州スマートコミュニティ創造事業のプロジェクトエグゼクティブ として,2013 年より現職にて事業に従事.

荒牧:北九州市全域という意味での特色と,東田という実証地の特色があります.この八幡東田という土地は,1901年に官営製鐵所の近代高炉に火入れが行われたまさにその場所であり,そのため北九州市全域が近代産業発祥の地として,日本を代表する工業都市の成功を謳歌しました.しかしながら,その裏返しとして,昭和30年代はひどい公害に悩まされました.私の子どものころは,七色の煙と言いますけれども,それを小学校の校歌で高らかに歌っていました.朝は本当にどんよりして,朝方にすっきりした青空を見た記憶がないくらいです.

 産学官民が一緒になって,その公害を克服してきたところが,この北九州市ということになります.

 婦人会の方たちが,ワイシャツがたくさん汚れる日は子どもの体調が悪いというようなデータをとって,そうしたら大学の先生方が,そんなデータの取り方では具体的な証明にならないので,こういう装置でこういう数値をとってということをガイドされる.その数値によって自治体が動いて,今度は企業が動くというように公害を克服してきた.そういった背景のもとに,今,環境に対するさまざまな施策をやっているのが北九州市なんです.

 もう1つ,八幡東田では,10年ほど前に再開発事業が始まったのですが,そのときのコンセプトが「お持ち寄り,お裾分け」ということで,地域の企業や住民が得意なものを持ち寄って,一緒にシェアしていこうというコンセプトで作られました.

 その一環として,隣接する製鉄会社の工場にあるボイラーの更新の際に,単純にボイラーを更新するだけではなく発電機を入れて,熱は従来どおり工場の中で使うのですが,電力は地域に流す.当時の特区を活用して,一般電気事業者からではなく100%その製鉄会社から電力を供給しているという地域なんです.

 もう1つは,製鉄のコークスを作る過程で水素が出てきますので,その水素も工場の中のエネルギーとして使っていたのですが,その一部も街のエネルギーとしてもお裾分けするという地域でもあります.

 「お持ち寄り,お裾分け」というコンセプトの中で,将来は電気といってもやはりふんだんに使えるという形ではないかもしれないし,やはり日本も足るを知る世の中に戻っていくのではないかと,10年ほど前に地域節電所というコンセプトが考えられたというわけです.

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