3Dプリンタによるものづくりが新たな生産手段として注目を集めている.中でも熱可塑性粉末材料をレーザで焼結あるいは溶融することで三次元形状を造形する装置は適用範囲もプラスチック部品から金属部品まで幅広い.一層ごとに積層して造形する工程のため機械加工の制約がないことおよび造形物の物性が最終製品として十分通用することから,射出成形や鋳造,機械加工といった既存工法では作ることができない複雑で軽量化と強度維持を両立させた部品の生産を可能にする.本稿ではこのレーザ焼結技術を用いた3Dプリンティングで実際にどのような製品が作られているのか,また今後どのような分野に利用されようとしているのか,またそのために解決すべき課題について述べる.

1.はじめに

 三次元形状を誰でもが簡単に作れる機械ということで3Dプリンタが脚光を浴びて久しいが,個人レベルでの浸透に加え,産業界においても新たなものづくりのツールとして真剣に検討が進んでいるようである.しかしながら軍事,航空宇宙,発電プラント,医療,コンシューマ雑貨などの領域で3Dプリンタが広く活用されている欧米に比べ日本ではまだまだその活用事例は少ないといわざるを得ない.一方,セミナーやWebページなどで紹介される欧米の活用事例についても,実際に製品として使われているのか単に試験的に作られたプロトタイプなのか判断に苦しむことも事実である.一口に3Dプリンタといってもさまざまな方式があるが本稿では熱可塑性粉末材料をレーザの熱エネルギーで積層的に焼結あるいは溶融することによって三次元形状を造形する方式を採用するレーザ焼結型3Dプリンタについて,それがものづくりにおいてどのような材料でどのような用途に利用されているのかを最新の事例で示す.また今後の発展のために解決しなければならない課題,開発が必要な材料および将来の展望について考察する.

2.3Dプリンタとアディティブ・マニュファクチャリング(AM)

 3Dプリンタの起源は1987年に商品化された光硬化樹脂に紫外線レーザを当てる方式の積層造形装置で,迅速に試作品を作るためのもの,すなわちラピッド・プロトタイピング(RP)装置と呼ばれていた.現在,積層造形装置にはさまざまな方式があるが,基本的にはどれも原理は同じで,三次元形状を厚さ0.02mm~0.3mm程度の多数の積層面にスライスしその一層ずつを順次,何らかの手法で固めることによって最終的に三次元形状を造形するものである.その中で3Dプリンタとは本来「プリントヘッドやノズルあるいはその他のプリンタ技術を用いて材料を堆積させることによって立体形状を造形する比較的安価な積層造形装置」のことであったが最近では3Dプリンタという言葉が広く浸透していることでレーザを使うようなハイエンド装置も3Dプリンタと呼ばれており,その定義は曖昧になっている.2009年のASTM F42委員会で,このような技術は付加的にものを作るということでアディティブ・マニュファクチャリング(AM)と呼ぶことが公式に決められている.したがって本稿でも以下AMあるいはAM装置という呼び方で統一する.

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