馬の耳に念仏とは、このことだ。ユーザー企業のIT部門の人に「ITベンダーに提案料を支払うべきだ」と言っても、「はぁ?ITベンダーの営業活動なのに、なぜ我々がカネを払わなければいけないのか」としか返ってこない。あのね、あなた方が要求する提案って、単なる見積もりじゃなく、自分たちでは編み出せないソリューション(解決策)でしょ。厚かましいにも程がある。

 ご存知の読者も多いかと思うが、私は以前から「ITベンダーの提案に対して、客はカネを支払え」と一貫して主張している。この極言暴論でも書いているし(関連記事: ITベンダーに「提案料」を支払っていますか)、他のコラムでも書いたことがある。そして、CIO(最高情報責任者)やシステム部長らが集まる会合に呼ばれた時などでも、そんな話をしている。だが、大抵の反応は今でも「はぁ?」である。

 今この記事を読んでいる読者の中で、「はぁ?」とか「木村はバカか」とか思っている人がいるとしたら、その人はきっとIT部門などの客側の人に違いない。逆にITベンダーの技術者、特に提案の現場に出ている技術者なら、きっと「激しく同意」してくれるだろう。実際、以前書いた「提案料を支払え」の記事には、Twitterなどで「手間と時間をかけて考え抜いた提案なのだから料金をもらって当然」といったコメントが多数寄せられた。

 だが、同じITベンダーでも経営層となると、なかなか「激しく同意」とはならない。彼らも「良い提案をするには多くのコストがかかる」みたいな話をするのだが、「では、提案料をもらえばいいじゃないか」と水を向けると、「お客様から提案料を頂くなど、とてもとても…」と後ずさりする。「提案料を寄こせ」などと言ってはコンペで負けるし、受注すれば開発の人月料金の中に紛れ込ませれば、提案のコストは回収できる…おそらくそんなところだろう。

 そんなわけで、いつまでたってもIT業界では、ソリューション提案に対して客がカネを支払うという、“他の業界では当然のこと”が当たり前にならない。だから、家ならばアーキテクト(建築家)にカネを支払うのに、ITでは客はド厚かましくも「なぜ提案料を支払わなければならないのだ」などと平気で言う。個々のITベンダーでは無理なら、IT業界として「提案料を支払え」と言うべきではないか。

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