ある大手サービス業のCIO(最高情報責任者)がぼやいていた。「本当は、システム子会社のうち開発部隊だけでも本社に戻したいのだが、色々としがらみがあり、なかなか難しいんだよ」。そう思うなら、CIOなのだからぼやいていないで、とっとと戻せばよいと思うのだが、今回の暴論はその話ではない。なぜ、このCIOが開発部隊を本社に戻したいと考えているのか。それに絡む話だ。

 このCIOによると、「お見積もり」に象徴されるオーバーヘッドが最近のシステム開発においては、結構つらいそうだ。その企業ではビジネスのデジタル化が進んでいて、もはや新サービスにはITが不可欠。ライバル企業に打ち勝つためにも、新サービスを実現するシステムを素早く作りたい。だが、子会社とはいえ開発部隊が別会社だと、実際の開発以外の作業に思わぬ時間を取られてしまうのだ。

 本社のIT部門がRFP(提案依頼書)を作成してシステム子会社に依頼する。システム子会社では工数を見積もり、自社だけでやるか外部も使うかなどを決めて見積書を出してくる。それを受けてIT部門では…。こうした“商談”プロセスだけでも、貴重な時間を空費する。タイムラグが仇となり、他社に似たサービスを先に出されてしまえば、画期的なサービスだったはずが他社の“猿真似”になってしまう。

 数年に一度、あるいは十数年に一度のシステム刷新プロジェクトぐらいしか手掛けたことのない製造業などのIT部門には想像もつかないかもしれないが、デジタル化が進むサービス業や小売業ではシステムの開発サイクルは極めて短い。大手小売りのCIOも「1カ月ほどで要件定義を行い、1カ月もかけないで実際の開発を終える。そんなプロジェクトはざらだ」と話していた。

 つまりスピードが勝負なのだ。業種・業界によって時差はあるだろうが、今後は全産業でビジネスのデジタル化が進むから、こうしたスピード開発が“新常態”となる。当然、技術者はビジネス現場のそばにいてほしい。もちろん、なんちゃって技術者ではなく、プログラムを書ける技術者だ。では、彼らはどこにいるだろうか。実は、子会社にプログラマーのいる冒頭の企業はまだ幸せなのである。

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