活字離れ、インターネット書店の台頭などで書店経営は年々厳しさを増している。そうしたなか、35年以上前の1980年からITの利活用を進め、安定した利益を確保しているのが、「メトロ書店」を経営する川崎興産だ。JR長崎駅直結の複合商業施設にある本店には50万冊の書籍・雑誌がジャンルごとに棚区分されており、児童書・文具・CD・DVD商品には専用コーナーが設けられている(写真1)。この長崎市の本店に加え、福岡市に2店、神戸市に1店の計4店舗を構える同社の特長は、現社長の川崎孝氏が自らITシステムを開発し、業務に適用していることである。

写真1●長崎駅に直結した複合商業施設にあるメトロ書店本店
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 特に、書店内の在庫を手軽に検索できるタッチパネル式の書店在庫管理システム「メトロン」は、同社が日本で初めて開発し、業界に普及していったもので、本店には5台設置されている。誰でも簡単な操作で利用でき、指定した書籍について、在庫の有無、在庫がある棚の番号、電子書籍の注文コードなどを大きな文字で表示するほか、JRの利用客向けに列車の発車時刻表も掲載する(写真2)。

写真2●JRの時刻表表示機能も塔載している書店在庫管理システム「メトロン」
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 川崎興産は1982年、書店在庫管理システムを開発した電算部門をメトロコンピュータサービスという新会社として独立させ、全国の書店向けにオフコンベースの書店在庫管理システム「メトロシステム」を販売。その後、パソコンソフトやWebシステム、モバイルアプリなどを開発しながら、「MetroLink」という書店経営総合支援システムに発展させている。

 こうしたメトロ書店におけるIT利活用の業績が評価され、川崎興産は2016年、経済産業省主管の「攻めのIT経営中小企業百選」に選定された。これはITをビジネスに有効活用している中小企業100社を3年間にわたり選定するプロジェクトで、2年目の2015年度分となる「2016年 攻めのIT経営中小企業百選」に、書店として唯一選定されている。

 この「2016年 攻めのIT経営中小企業百選」にエントリーするための書類作成支援を担当したのがITコーディネータの弥栄睦子氏である。弥栄氏には出版社を支援した実績があり、取次や福岡の大手書店の仕入れ部門の業務に関する知見を持つ。大手広告代理店に勤務していたとき、制作ディレクターとして長崎を担当したことをきっかけに川崎興産の申請支援を担当した。以下では、川崎興産の幅広い事業のうち、メトロ書店におけるIT利活用の様子を解説しながら、弥栄氏の今後の考えをまとめよう。

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