フリークアウトと民放キー局5社(日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョン)は、民放公式テレビポータルサイト「TVer」および各放送局が運営するキャッチアップサービスの視聴中に掲載されるインストリーム動画広告のマーケットプレイス「TVer PMP(Private Marketplace)」を共同で開発した。広告主は、TVer PMPに接続されたDSPを通じて横断的に各放送局の広告在庫に買い付けを入れて、インストリーム動画広告を配信できる。民放キー局5社が主体となって広告マーケットプレイスを運営し、各放送局の広告在庫を互いに拠出して販売するのは初めての試みという。TVer PMPは、フリークアウトが提供する媒体社向け広告配信プラットフォーム開発支援サービス「Red for Publishers」を用いて開発した。

 TVerに参画するTBSテレビの石橋正人氏(営業局 営業推進センター 営業推進部 兼 総合マーケティングラボ ビジネス戦略部 兼 総合編成局 総合編成部)および日本テレビ放送網の矢部怜史氏(ICT戦略本部 技術ディビジョン)と、フリークアウトの多湖大師氏(Red for Publishers Product Marketing Manager)および鈴木司氏(営業本部 本部長)にTVer PMPを開発した狙いや今後の展開について、聞いた。

(聞き手は本誌編集長、長谷川博)

左から日本テレビの矢部氏、TBSテレビの石橋氏、フリークアウトの多湖氏、同・鈴木氏

TVer PMPを開発した狙いは。

石橋 TVerでは2015年10月のサービス開始以来、掲載金額や表示期間があらかじめ決まっている予約型広告を販売してきた。2018年になると、広告枠の買い付け金額や表示期間などを機動的に変更できる運用型広告を採用する動きが広告主の間で活発になってきた。

 これまでTVerに参画する民放キー局5社は、個別にPMPに参加して運用型広告を取り扱っていたが、放送局としても運用型広告に対応するプラットフォームを用意しようという話になった。独自のPMP立ち上げに向けて、2019年春に民放キー局5社などが参加する在京5社配信ビジネス検討会 サービス検討会議に「PMPワーキンググループ」を設置し、準備を進めてきた。

矢部 これまで民放キー局各社の技術部門が個別にPMPに対応する作業を行っていたが、技術部門の担当者の数は限られるので、短期間で作業を終えるのは難しかった。そこでTVer PMPの構築に合わせて、業務を効率化するべく、5社共通の運用フローを整備した。

民放キー局各社が個別に対応していた時期にはどのような課題があったのか。

石橋 例えばPMPを通じて広告主の広告をTVerで配信できるようにするためのシステム的な作業や、広告考査の運用フローはPMPによって異なっており、それに対応するための作業の負荷が大きかった。今回、TVer PMPが立ち上がったことで、設定作業が簡易化され、広告考査の運用フローも統一された。作業を効率化できたのは大きなメリットだ。

TVer PMPを通じて配信する広告量の見込みは。

石橋 TVer PMPがどれだけマーケットに受け入れられるかによる。インターネット広告全体における運用型広告の割合は高い。なかには運用型広告しか行わない広告主も存在する。こうした広告主のニーズに応えることができるプラットフォームを構築できた点は大きい。現在、TVerで配信される広告の大半は予約型広告だが、今後は予約型広告と運用型広告の二本柱にしていく。TVer PMPを多くの広告主に使ってもらいたい。民放キー局5社がまとまって作った仕組みなので大事に育てていきたい。

 今後、TVerに参画する在阪局もTVer PMPを利用できるようにしたい。TVer PMPのエコシステムをより大きなものにしていきたい。

多湖 インターネット広告全体の動向としては、運用型広告が全体の8割を占める。TVerに配信できる運用型広告の存在がもっと知られれば、ニーズは高まっていく。TVer PMPは、今後TVerが運用型広告の需要を取り込むための最初の起点の部分になる。

今回、フリークアウトをパートナーに選んだ理由は。

矢部 フリークアウトは広告主側のプラットフォームであるDSPを独自で開発するなど技術力が高く、アドテクに対し深い知見がある。さらに様々な企業とパートナーシップを結び、事業を行っている。これらの点から、独自のPMPを開発・運用する上でのパートナーになってもらいたいと考えた。フリークアウトの下でシステム的な問題を一元的に管理できる点は、非常に良いと考えている。

鈴木 今後もTVer PMPがより良いものになるようにサポートしていく。広告全体におけるインターネット広告の比率が上がっている中で、TVerほどプレミアムでファーストチョイスになるべきメディアはなかなか日本にはない。良い機会、チャレンジングな機会に恵まれたと認識している。

TVer PMPに接続するDSPは今後増やすのか。

石橋 現在、二つのDSP事業者が自社のDSPをTVer PMPに接続したと発表している。このほかに数社のDSPがTVer PMPの認定DSPとなっており、現在技術テストを行っている。

 ただし我々は闇雲に接続先を増やそうとは考えていない。安心・安全なコンテンツを配信するTVerの思想に同意してもらえるDSPに限定する。

不適切な広告が流れるのを防ぐための対策は。

石橋 広告については二つの考査を行っている。一つは、広告主の業態が放送局側の基準に抵触していないかを考査する。その上で、広告素材そのものを考査する。これにより、ブランドセーフティーを担保している。

多湖 当社と民放キー局5社は、当社が提供している媒体社向け広告配信プラットフォーム開発支援サービスである「Red for Publishers」 を用いてTVer PMPを開発した。このサービスには、配信する広告素材を事前に考査できる機能があり、この機能によって、広告の品質担保を実現している。

出典:日経ニューメディア 2019年11月18日号 pp5-6
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