放送事業者を含む様々な事業者が動画配信を開始し、テレビやSTBがインターネットに接続される時代に、テレビの見方はどう変わるのか。そのカギを握る技術の一つがEPG(電子番組表)だろう。

 テレビやSTBに搭載されるアプリを立ち上げて、契約している動画配信サービスが提供する所望の番組を見つけて視聴するという形は既に実現されている。筆者が所有するテレビもアプリを搭載するが、いちいち操作が面倒で、結局は大画面ではなく、スマホで見てしまう。最近のテレビには、リモコンに個別の動画サービス専用のボタンを実装する例もある。確かに利用のハードルは下がるだろうが、結局は自分で所望の番組を探し出す必要があることは変わらない。放送事業者やケーブルテレビ会社のように自ら放送を行い、かつ配信も手がける事業者にとっては、放送と連携する形でインターネット上で展開するサービスを提供できれば、利用者の使い勝手の向上を図りながら競合サービスと差別化できる。その手段の一つとして、番組表を活用することは非常に有力となり得るだろう。

 日本におけるEPGとして多くのテレビやSTBに採用されている「Gガイド」技術を開発する米TiVo社の日本法人TiVoは、CEATEC JAPAN 2018に合わせて、「TiVoプライベート展示会」を開催した。ここで、OTTサービスと連携したEPGの姿を、実際に試作したシステムをデモンストレーションする形で披露した。

<見逃し視聴と番組表を連携>

 開発した試作システムの目玉が、見逃し配信サービスとの連携である。プレミアム・プラットフォーム・ジャパンの承諾を得て、Paraviが提供する見逃し配信サービスをEPGから案内するシステムを試作した。見逃し配信で提供される番組を、アプリの立ち上げといった操作を経ずに、番組表から発見し数ステップの簡単なリモコン操作で当該番組の視聴まで行える様子を示した。

 見逃した番組の見つけ方として3パターンを用意した。一つは、見逃しで視聴できる番組の一覧を放送日別に表示する形式である。見逃し配信が可能な過去番組がある場合に、番組表上でマークを表記する形式も用意した。この形式は、放送事業者にとって、放送サービスと見逃し配信との連携を行ううえで優れたUI(ユーザーインタフェース)であると感じた。さらには見逃し視聴番組を放送局別に一覧表示する形式も用意した。

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図1●見逃し配信サービスとの連携例
(写真提供はTivo、サービス/番組名などは仮想)

 TiVoとしては、Paraviはもちろんのこと、Hulu、FOD、NODなどを提供する各社にも提案していきたい考えである。定額の有料動画配信は、非放送系と放送系の事業者とが、激しい顧客獲得競争を展開している。見逃し配信はサービスの一部とはいえ番組表から飛べるのは放送事業者が提供するサービスならではの優位点であり、見逃しサービスを起点に顧客を獲得するのにいいツールになりえそうだ。

 本来は、TVerのような無料サービスでも同様の展開ができれば、利用者にとって非常に便利であることは間違いない。実際に、TVerがテレビメーカーと組んで実験的に実施したこともある。とはいえ、無料の見逃し配信は利用規模が大きくなり、放送の広告モデルへの影響も懸念される。無料サービスを含めた本格的な展開には、広告に基づく現行ビジネスモデルとの整合性を確保する必要があるだろう。

<番組サーチ・推薦機能をいよいよ日本語化>

 もう一つの目玉が、既に欧米で実用化されている「パーソナライズドコンテンツディスカバリー」のデモだった。放送、録画、VODなど、異なるメディアを横断した形で、番組サーチやリコメンデーションなどを実現する技術である。技術開発競争の激しい分野で、メディア会社が個々に技術開発を進めるのはハードルが高い。TiVo社が買収して活用しているDigitalsmiths社の技術は、米国ではNetflixとComcastを除くほとんどの衛星放送、ケーブルテレビ事業者などに採用されて利用者の規模は6000万世帯以上あるという。IT系有力企業に十分に対抗できるだけの顧客を抱えているといえよう。技術の特徴としては、例えば視聴履歴や一般的な人気などに加えて、視聴動態(例えば夕方7時の時間帯には映画を見ているなど)も加味してお薦め番組を表示することなどを挙げる。

 この技術自体は例年デモを実施し、技術の優位性をアピールしてきたが、海外事例では現実感が乏しかった。今年はいよいよ日本語化を実施し、Gガイドへの適用例としてデモンストレーションを行った。国内の放送・VODで提供されている番組の日本語メタデータと、国内ケーブルテレビ局の協力を得て取得した国内Gガイドユーザーの視聴履歴データを活用した。デモでは、お薦めのメニューをオペレータ側で制御したり、個々の視聴履歴に応じて実際にお薦めされる番組が変化する様子が、国内で放送、配信されているおなじみの番組で示された。TiVoは、ケーブルテレビ会社やVOD事業者などに対して、一緒に実験を進めないかと話を持ちかけているという。映像の視聴履歴を取得できるオペレーターだけでなく、音声の聴取履歴の活用なども、この技術の応用として考えられると説明する。

図2●番組サーチ・推薦機能を日本語化
(写真提供はTivo、サービス/番組名などは仮想)
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 このほか、今回は開発を進めるEPGの新しいUIを示した。一つは、放送中の番組を見ながら、トランスペアレント(透過)にして、他の放送中番組やお薦め番組がチェックできるようにしたものである。新しいデザインの番組表も用意した。ユーザー調査に基づき、番組詳細情報を省略しタイトルのみ表示、地上デジタル放送の番組を一画面で確認できるようにして閲覧性を向上させた。一方で、カラーパレットで番組のジャンルが一目でわかるようにした。

 さらに、マイリストの機能強化の提案を行った。簡単にマイリストに番組を登録できるようにしたり、例えばドラマを登録すると次の回から自動録画したり、各種動画サービスと連携してマイリストの内容から番組をお薦めするといった機能である。

 今後国内で出荷されるテレビやSTBには、今回デモンストレーションされたような技術の多くが順次搭載されていくだろう。

出典:日経ニューメディア 2018年10月29日号 pp.4-5
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。