情報キュレーションサービスを展開するGunosyが動画コンテンツの強化を進めている。2019年3月11日には情報キュレーションアプリ「グノシー」に「TVタブ」を新設し、日本で放送しているテレビ番組のダイジェスト版の配信を開始した。

 まず日本テレビ放送網がダイジェスト化したテレビ番組を調達し、配信を行っている。Gunosyは2019年3月中に別のテレビ局からの調達開始を予定する。当面は1日当たり1局につき2~3本程度の新規コンテンツ追加を想定する。

 代表取締役 最高経営責任者(CEO)の竹谷祐哉氏は本誌に対し、Gunosyがテレビ番組ダイジェストを開始した理由について説明した。「世の中の時流に合ったコンテンツを著作権をクリアした形で適切にユーザーに届けたいという思いがあった」とした。「グノシー」の広告収入に与える影響については、「結果としてマネタイズにつながる」という考えを示した。今後はニュースアプリの「ニュースパス」や女性特化型アプリの「LUCRA」での動画配信も拡充する方針という。

<アルゴリズム強化で釣り記事抑制を目指す>

 Gunosyは動画コンテンツを強化する一方で、「情報を世界中の人に最適に届ける」という自社のミッションを達成するべく、自社提供アプリである「グノシー」などの記事配信アルゴリズムの改善を進めている。2019年1月の決算発表会では、アルゴリズム改善による記事の効果的な掲載によって、記事クリック率が10%以上改善したと発表した。

 さらに、いわゆる「釣り記事」と判定された記事の表示を抑制するアルゴリズムを実装し、試験導入を開始したと報告した。アルゴリズムの活用によって、記事の本文があるページにおける滞在時間などの要素を基に、釣り記事かどうかの目星を付けるという。「釣り記事が多いとみられるメディア発の記事の評価を自動的に下げるアルゴリズムを実現するためのトライアルをしている」(竹谷氏)とした。

 同社は今後、記事やコンテンツのより精緻なパーソナライズに向けて、より幅広いデータを保有することを目指す。既に取得しているアプリユーザーの情報(性別、年齢、位置情報、記事・広告接触ログ)に加えて、「決済」「信用・与信」「所有在庫」「予定」などの情報も取得し、各ユーザーが必要とする記事やコンテンツをより的確に提供したい考えである。竹谷氏は、「例えば決済情報については、キャリア決済を手がける通信キャリアや、決済事業者との連携によって実現できるのではないか」と述べた。

 Gunosyは今後の目標として、「全社売上高の年間30%成長」「自社提供サービスのMAUの年間20%成長」などを挙げている。同社が経営戦略の基盤とする自社のAIによるデータ活用の強みを継続的に発揮できるかどうかが、目標を達成できるか否かを左右しそうだ。

<新たな収益源確保に向けアプリ切り出しを推進>

 現在、Gunosyの収入源は、大半が広告関連収入(自社媒体の広告収入やアドネッドワークの収入)となっている。同社が新たな収入源の確保に向けて行っている施策の一つが「グノシー」からのアプリの切り出しである。多様なジャンルのコンテンツを掲載する「グノシー」から派生する形で特定の分野に特化した新アプリを立ち上げ、将来的に収益源とすることを目指している。まず2018年10月に「グノシー」からのアプリ切り出しの第一弾となる「グノシースポーツ」の提供を開始した。

 2019年3月4日からは、アプリ切り出しの第二弾となる「オトクル」(iOS版)を提供している。「オトクル」はレストランやカフェなどで使えるクーポンをユーザーに届けるアプリ。「グノシー」のクーポンタブではユーザー全員に同じクーポンを表示しているが、「オトクル」では人工知能(AI)を使ってよりパーソナライズした形での情報提供が可能で、ユーザーの嗜好に合いそうなクーポンを届けるという。竹谷氏は、「オトクル」の提供を開始した背景について、「ユーザーの嗜好に合う情報を提供するためのパーソナライズが必要という点でクーポンはニュースと同じ。クーポンと人をマッチングするニーズはある」とした。

 竹谷氏は「オトクル」の収益化について、「ビジネスの手法は色々と考えられる。まずはユーザー数を増やし、それから確立する」(竹谷氏)としている。収益化の手段の一例として、オンライン(オトクル)からオフライン(店舗)に送客する仕組みの構築を挙げた。具体的には、「オトクル」に決済機能を搭載し、アプリ上でクーポンを発行する店舗に対する注文と決済ができるようにする。「オトクル」からの送客数に応じて、店舗側から手数料を受け取るというイメージである。「手数料は送客数に応じた金額になるので店舗側にも受け入れてもらえるのではないか」という見方を示した。「オトクル」のリリース後も「グノシー」でのクーポン提供を継続している点については、「『オトクル』も『グノシー』のクーポンタブも当社が提供している。両方の提供によって当社が提供するクーポンへの接触時間が増えればいい」と述べた。

<IoT・5G時代を見据え自社が扱う情報を拡大へ>

 Gunosyは2019年1月15日に発表した中長期ビジョンで、「スマホメディア企業ではなく、適切な場所で最適なコンテンツを届ける企業」と自社を位置付けた。次の10年のために必要な事項としては、「扱う情報の網羅性の拡大」を挙げる。

 竹谷氏は本誌に対し、今後の他社との協業に意欲を示した。「当社には、AIを駆使して膨大なデータからサービス体験を作り出す力がある」「今後、IoT化の進展などによって新たにデータが集まるのは、データ活用に長けた事業者だけではないだろう。データ活用のためのアルゴリズムは当社が作り、他社と一緒に新たな顧客体験の創出を目指すという組み方は考えられる」とした。

出典:日経ニューメディア 2019年3月18日号 pp.2-3
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。