日経BP社は2016年11月24日、ITインフラを対象とした表彰制度「ITインフラテクノロジーAWARD 2017」の受賞技術を選出した。ITインフラテクノロジーAWARDは、クラウドサービスやビッグデータ基盤、IoT(Internet of Things)基盤など、ITインフラの急速な進歩を受け、企業が今後注目すべき技術・製品・サービスを有識者の審査を通じて選出するもの。毎年1回実施しており、今回で3回目となる。

 2017年に企業の注目を集める可能性が最も高い「グランプリ」には「サーバーレスアーキテクチャー」を選出した。また、グランプリに次ぐ2位に「カンバセーショナルUI」を、3位に「ストレージクラスメモリー(以下、SCM)」をそれぞれ選んだ。

 審査員は、野村総合研究所の石田裕三氏(上級アプリケーションエンジニア)、ウルシステムズの漆原 茂氏(代表取締役社長)、国立情報学研究所の佐藤一郎氏(アーキテクチャ科学研究系 教授)、ITジャーナリストの新野淳一氏(Publickey 編集長/Blogger in Chief)、楽天の森 正弥氏(執行役員 楽天技術研究所 代表)の各氏が務めた(写真)。

写真:審査会の様子
(撮影:中野 和志)
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 グランプリのサーバーレスアーキテクチャーは、その名の通りサーバー/仮想マシンを利用せずにシステムを構築するアーキテクチャーのこと。メッセージの送受信など何らかのイベントが発生した際に、JavaScriptで記述された処理を実行する「イベント駆動型コード実行サービス」などを組み合わせて実現する。具体的なサービスには、米Amazon Web Servicesの「AWS Lambda」や米Microsoftの「Azure Functions」などがある。

 サーバーレスアーキテクチャーを推薦したITジャーナリストの新野氏は、「クラウドの特性を生かしたアーキテクチャーである上、しかもシステム運用コストが一桁安く済むというインパクトがある」と、技術面に加えてコスト面でも企業の注目を集めると評価した。他の審査員も賛同し、グランプリに決まった。

 2位のカンバセーショナルUIとは、音声やチャットなど、“対話”を通じて情報システムを操作するインタフェースとその技術群のこと。個人向けであれば、米Apple「iPhone」の音声アシスタント「Siri」などが分かりやすい。企業においても、例えばコールセンターなどで音声やチャットツールを使ってやり取りするシステムの導入が進みつつある。

 ウルシステムズの漆原氏は、「インフラとしてはレイヤーは高めだが、人間とコンピュータのインタフェースを変える“次世代のインフラ”として大きな可能性がある」と推薦した。楽天の森氏も、「コールセンターに加えて、IT現場のDevOps系ツールのインタフェースにも対話型のBotの採用が進んでいる。AI(人工知能)のサポートもあって進化が速く、今後さらに普及する」と予想する。

 3位のSCMは、SSDよりも高速で、DRAMより大容量化しやすい次世代型の不揮発性メモリーのこと。米Intelと米Micron Technologyが共同開発する「3D XPoint」などが該当する。

 SCMを推薦した野村総合研究所の石田氏は、「現状の企業情報システムは、I/O性能がシステム全体のボトルネックになりやすい。SSDよりもさらに高速なSCMが普及すると、企業情報システムのあり方を大きく変える可能性が高い」と期待する。また、国立情報学研究所の佐藤氏は、「ディープラーニングのシステムを運用する目的で、SCMを求める動きが自動車会社などで出ている」と指摘。やはりSCMを推薦した。

 なお、選出対象の技術候補については、5人の審査員に加え、日経SYSTEMS、日経NETWORK、日経クラウドファーストの各編集部が選出した。