ブロックチェーンという「黒船」が金融業界に押し寄せ、改革を促している。ただ、それはブロックチェーン技術の採用とは必ずしもリンクしないかもしれない。

 銀行間決済インフラを提供する国際銀行間通信協会(SWIFT)は2016年6月28日、世界の銀行と共同で国際送金サービスの利便性を高めるプロジェクト「国際決済の革新に向けたイニシアティブ(GPII:Global Payments Innovation Initiative)」に参加する銀行が73銀行に達したことを明らかにした(ITpro関連記事:国際銀行間通信協会が決済改革に乗り出す 企業間の即日処理など)。

 日本では三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行が参加済み。この73行で、SWIFTネットワーク上の国際送金の75%近くを占めるという。

国際決済を即日化し、透明性を高める

 GPIIは、これまで数日かかっていた企業間の国際送金を即日に処理できるようにし、手数料や手続きの透明性も高めるプロジェクトだ。

 従来の国際送金サービスは、その国の代表的な銀行が中継役(コルレス銀行)となり、3~4の銀行による仲介を経て行われるケースが多かった。このため、手数料が高止まりする、手数料の決め方が不透明、事務処理の遅れから送金に数日かかる、といった問題があった。さらに、指定した口座に確実に送金できたかどうか、送金側が確認する術がなかった。

 「ブロックチェーン技術が国際送金の世界に革命をもたらす」との言説が良く聞かれる背景には、こうした国際送金サービスの使い勝手の悪さがあった。

ブロックチェーンの特性を自ら調べる

SWIFT EMEA・アジア太平洋地域担当チーフエグゼクティブのアライン・ラース氏
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 SWIFT EMEA・アジア太平洋地域担当チーフエグゼクティブのアライン・ラース氏は、既存の送金システムと比較したブロックチェーン技術の利点を率直に認める。「ブロックチェーン技術は、取引の即時性やトレーサビリティの点で大きなメリットがある」(ラース氏)。

 ブロックチェーン技術は、参加者が全ての取引記録を発信・共有することで、「信頼のおける第三者」によるシステム管理を不要にする技術である。SWIFTのように、メッセージ(電文)をリレーすることで取引を進めるアーキテクチャーと比べ、即時性や透明性を高めやすい。

 当のSWIFTも、ブロックチェーン技術を使った送金システムなどのプロトタイプを開発し、その特性を分析している。ブロックチェーンのオープンソースソフト(OSS)開発プロジェクト「Hyperledger Project」にも一般会員として加盟している。

 SWIFTはこうした分析の結果として、現行のブロックチェーン技術には上記のような利点がある一方で、「取引の処理速度を高められる『スケーリング特性』や、参加する銀行を確実に認証する『アイデンティティ管理』の領域では、まだ弱点を克服できていない」(ラース氏)と判断した。

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