徘徊のおそれがある認知症患者の爪にQRコードのシールを貼る――。埼玉県入間市が2016年11月に開始した高齢者支援は大きな話題を呼んだ。開始から半年で認知症患者の家族30人から申請があり、シールを公布している。

認知症患者の爪に貼る「爪Qシール」
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 担当する入間市の長谷川 直人主事(福祉部高齢者支援課 高齢者支援担当)は「シールを取りに来た家族の方から『こういうのが欲しかった。ありがとうございます』と感謝の言葉を頂いた」と、確かな手応えを感じている。地元の警察やケアマネージャーからの評判も上々。全国の地方自治体からの問い合わせや視察も引きを切らないという。

 シールの名称は「爪Qシール」。入間市内のベンチャー企業であるオレンジリンクスが開発した。入浴しても簡単にははがれず、一度貼ると約2週間は貼り替える必要がない。何も持たずに外出してしまう認知症患者であっても、QRコードを読み取れば身元確認ができる。

 QRコードをリーダーで読み取ると、「入間市999 電話0429641111」と表示される。「999」の部分は人によって異なる。シールを配布された認知症患者にひも付く身元を特定する番号であり、市民から爪Qシールの交付ごとに割り当てる。「0429641111」は入間市役所の代表番号だ。

 警察や消防からの問い合わせに応じて、身元照会を行う。警察、消防以外からの問い合わせには回答しないルールにして、認知症患者本人の情報が第三者に漏えいしないようにしている。

GPS端末は持ち歩いてもらえない可能性

 「徘徊対策で一番の問題は『必ず身に付ける』というハードルのクリア」。長谷川主事はこう話す。入間市はGPS端末を使った位置情報サービスを以前から提供しているが、認知症患者の当人が端末を必ず持ち歩いてくれるとは限らない。いつも使っているかばんや財布に装着するケースが多いが、手ぶらで外出して道に迷ってしまう可能性もある。

入間市 福祉部高齢者支援課 高齢者支援担当の長谷川 直人主事
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 ほかの自治体では、自治体名と識別番号を印刷した「かかとステッカー」を靴のかかと部分に貼り付けるという取り組みをしているところが多い。ただ、認知症患者が家族の靴を履いて外出したり、素足やスリッパのまま外出したりする場合がある。

 その点、爪Qシールは本人の体に直接貼り付けるので、「行方不明時に持っていないかもしれない」というおそれは少ない。ただ、爪Qシールも完璧というわけではない。症状の程度によって本人が嫌がる場合があるし、シールなので意図的にはがそうとすればはがれてしまう。家族が貼り替えのタイミングを見誤ってしまう可能性もある。

 そこで入間市では(1)爪Qシール、(2)靴のかかとに貼り付ける「かかとステッカー」、(3)爪Qシールと同様のQRコードが印刷された「キーホルダー」の三つを同時に交付する。「使い分けではなく、すべて使ってもらう。合わないものは外してもらう。道に迷ってしまったとき、どれかが機能してくれればいい」(長谷川主事)という方針だ。

入間市の徘徊対策サービスで交付する三つのグッズ
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