決済の世界で、巨人の一挙手一投足に新興勢力たちが翻弄されている。その巨人とは国際的クレジットカードブランドの「Visa」。そして方針転換に右往左往を余儀なくされているのが、スマートフォン(スマホ)やタブレットのイヤホンジャックに差し込む小型リーダー端末と専用アプリを組み合わせてクレジットカード決済を可能にするスマホ決済サービス提供事業者だ。喜色満面な米スクエア、裏切られた感の強い楽天。その明暗を分けたのは、Visaが2015年5月7日に発した“ある通達”だった。

ICカード対応で岐路に立つスマホ決済事業者

 Visaが加盟店やクレジットカード発行会社に出した通達はこうだった。

 「『2005年1月1日以降に設置されたチップ・データ読取デバイスは、PINを受け入れる機能を備える必要がある』という要件がVisa Rulesから削除されます」

 簡単に言えば、IC対応のクレジットカードリーダー端末そのものにPIN(暗証番号)を入力するための数字キーのパッドを設けるという要件がなくなる。たったこれだけの要件の削除だが、業界内にもたらしたインパクトは大きかった。あるスマホ決済事業者は「Visaがこの要件を削除するとはびっくりした。だが、これでIC化対応にめどがつけられる」と安堵の表情を浮かべた。

 実は、多くのスマホ決済事業者は岐路に立っていた。Visaが2015年10月から施行する「ライアビリティシフト」(債務責任の移行)に向け、IC化対応へいずれかの対策を打ち出す必要に迫られていたからだ。

 ライアビリティシフトは、偽造カードを使った不正行為による被害の責任を負う立場が変わることを意味する。これまで、偽造カードの不正行為が行われた場合、その債務責任はクレジットカード発行会社(イシュアー)が負っていた。だが、ライアビリティシフトが施行された後は、ICカードの国際標準であるEMV規格に準拠したICチップ内蔵のクレジットカードに対応する決済端末を設置していない加盟店で不正が起きた場合、偽造カード不正による債務責任が加盟店と契約している加盟店契約会社(アクワイアラー)に課されることになる。つまり、スマホ決済サービス提供事業者、およびその事業者と包括代理店契約を結んでいるアクワイアラーは、2015年10月以降はIC対応の決済端末に切り替えなければ重い責務を負うことになってしまう。

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