今から3年前の2014年5月13日、グーグル内部に珍しく動揺が広がった。欧州連合(EU)の最高裁に相当する欧州司法裁判所が「忘れられる権利」を認める判決を下したことが理由だった。

 事の経緯はこうだ。

 1998年1月、スペイン人の男性、マリオ・コステハ・ゴンザレス氏は社会保障料債務回収のため、自宅を差し押さえられた。自宅物件が競売にかけられることになり、スペイン老舗の新聞社「LA VANGUARDIA(ラ・バングアルディア)」が公告を掲載した。

 だが、ゴンザレス氏は後に悩むことになる。自分に関する差し押さえ手続きは何年も前に完結して終了しているにもかかわらず、自分の名前で検索するとラ・バングアルディアの1998年1月と3月の2つのWebページへのリンクが表示されてしまう。

 2010年、ゴンザレス氏はスペインデータ保護局(AEPD)に救済を申し立てた。ラ・バングアルディア、そしてグーグルに対し、自らのデータを削除、もしくは非公開にしてほしいと申し立てたのだ。

 AEPDは男性の救済申し立てのうち1つは却下し、1つは認めた。ラ・バングアルディアの掲載した情報については法に沿った手順で公開されたものだと判断し、削除の要請は却下。しかし、グーグルに対しては検索対象から該当する情報を削除し、データにアクセスできないよう必要な措置を講じるように要請したのだ。

 その後、グーグルはスペインの全国管区裁判所にAEPDの決定取り消しを求め、訴訟を起こした。同裁判所は欧州司法裁判所に照会し、判決を求めた。しかし、5月13日、欧州司法裁判所はそのスペイン人男性の「忘れられる権利」を認める判決を下した。

 グーグルにとって、この判決の影響が海を越えて世界に広がることはどうしても回避したい事態だった。特に日本は個人情報保護において、EUにならう傾向が強い。

 今回の最高裁判所による決定は、忘れられる権利には言及しなかった。判断の先送りととも取れるし、表現の自由を優越する傾向が強い米国の判断に近づいたとみることもできる。プライバシー保護と表現の自由を巡る議論は、裁判所の決定を経ても、当面は続くことになるだろう。

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