勤務先に名前も聞いたことのない会社から電話が入る。出てみるとマンションなどの不動産投資の勧誘だった──。

 電話で営業というと、あまり良いイメージがないのは筆者だけではないだろう。だが、こうした手法が姿を変え、今や米国で営業の代表的手段となった。それが「インサイドセールス」だ。

 インサイドセールス業務の中心は、冒頭に挙げたような電話による内勤営業だ。日本国内でも、IT系の法人営業などで広がりの兆しが見られる。では、迷惑な従来型の電話営業とインサイドセールスには、どのような違いがあるのだろうか。

多様な手段を活用する現在のインサイドセールス

 一般的に営業と言えば訪問営業を指す。訪問営業は英語でフィールドセールス(Field Sales)もしくはアウトサイドセールス(Outside Sales)と呼ばれる。インサイドセールスはこれらの対義語として生まれた「訪問しない営業」である。先の例のように、電話による勧誘も広義ではインサイドセールスとされる。米国では1950年ごろには既に電話のセールストーク集が存在しており、1990年代に電話通話料の引き下げとともに活用が広がった、歴史ある営業スタイルだ。

 近年注目を浴びるインサイドセールスは、さらに多様な手段を組み合わせている。多くのインサイドセールスは4P(商品:Product、価格:Price、流通:Place、プロモーション:Promotion)で馴染みのあるマーケティングミックスと連動する。SNSでプロモーションし、リード(見込み)に対して電話やメールなどを活用し、案件化・受注に結び付ける。資料や見積書の送付もオンラインなのでスピード感がある。複雑な商品はWeb会議など様々なツールを用いることで非対面にもかかわらずデモまで披露できる。

インサイドセールス vs. 従来型電話営業

 従来型の電話営業であるテレマーケティング(アウトバウンドテレマ)と、近年のインサイドセールスとの違いについて、もう少し詳細に見てみよう。

 たいていアウトバウンドテレマの対象は個人である。アンケートなど何らかの方法で取得した電話番号に対して、あるいは無作為に電話をかける。比較的安価な商材が中心である。ケーブルテレビや光回線、インターネットなど、通信サービスなどの電話による営業は馴染みがあるだろう。

 アウトバウンドテレマはあらかじめ準備されたスクリプトに従い顧客開拓を行うのが特徴だ。この営業の成否はごく短い時間に決する。うまく行かなかった場合は、直ちに次のリード獲得のため電話をかける。このようなシンプルなルーチンであるため、人材はアルバイトなどでも賄える。

 一方、インサイドセールスの対象の中心はB2B市場だ。インサイドセールス担当者は、基本的にはスクリプトに頼らず、マーケティング施策や戦略を念頭に置きつつも臨機応変の営業トークを展開しなくてはならない。そこにはフィールドセールス顔負けの、巧みなインサイト(洞察)や創意工夫がある。また、新規開拓のみならず、受注後のフォローやアップセル(より高価な商品を売る)、クロスセル(関連する商品を売る)も実施する。インサイドセールスは一般的にはアルバイトではなく、正規社員や契約社員などプロフェッショナル人材が担う。米国では、テレマーケティングとインサイドセールスでは給与の面でも違いがあるようだ。

 国内のIT企業で実際に募集されていたインサイドセールス要員の求人情報を例示する(表1)。営業経験に加え、単純な電話応対以上の高度なスキルが要求されるとうかがえる。

表1●国内IT企業のインサイドセールス求人情報の例
出典:デル
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