欧州を震源地として、LPWA(Low Power Wide Area)と呼ぶ新たなネットワークが新興プレーヤーによって世界に広がろうとしている。各国の通信事業者が対応を迫られる中、韓国最大の通信事業者であるSKテレコムはいち早く全国展開を完了。IoT時代における通信事業者の在り方を占うものとして注目を集めている。

 2016年7月4日、韓国最大の通信事業者であるSKテレコムは山岳地帯を除く同国ほぼ全土で、LPWA(Low Power Wide Area)網の敷設を6月末に完了したと発表した。通信事業者が国内全域にLPWA網を敷設したのは世界でも初めてのケースとなる。

省電力、大量同時接続、安価が特徴

 LPWA網は、1基の基地局で半径数kmレベルの広域をカバーする無線通信網である。LTEや3Gといった既存の移動通信網と比べると、次の3点が大きく異なる。(1)低消費電力、(2)膨大な数のデバイスを同時に接続、(3)安価という点だ。つまりLPWA網はIoT(Internet of Things)デバイスの大半を占めるとされ、電池寿命10年のダムデバイス(単純なセンサーのみを搭載したデバイス)に向けた、これまでにない新しいネットワークとして注目を集めている。

 LPWA網は利用する周波数帯によって、「免許帯域」と「免許不要帯域」の2つに大別される。

 免許帯域を利用するLPWA網の中で注目すべきは「NB-IoT」(Narrow Band IoT)である。NB-IoTは2016年6月22日に3GPPが標準化仕様策定の完了を発表したばかり。NB-IoTは既存の移動通信網をデチューンする(性能を下げる)ことで実現するネットワークと言える。通信事業者が保有するネットワーク施設を用いてLPWA網を展開するため、基本的には新規にネットワークを構築する必要がない。このほかの免許帯域を利用するLPWA網では、「LTE-M」(LTE Cat. M1)や「LTE Cat.0」などが標準化されている。

 一方の免許不要帯域では、通信事業者以外の新興プレーヤーがLPWA網を展開している。仏Sigfox、仏LoRa Alliance、米Ingenuなどが代表である。本記事ではこれらのプレーヤーを総称して「LPWA 事業者」と呼ぶ。LPWA事業者やそのパートナー企業は、フランスやスペインなど欧州各国で既に全土敷設が完了しているものがある。

韓国政府がIoTを後押し

 今回、SKテレコムが韓国ほぼ全土に敷設したのは、LoRa Allianceが免許不要帯域で展開するLPWA 網の「LoRaWAN」である。2016年6月末の敷設完了は当初の予定より6カ月も早い。人口カバー率は99%に上るという。一方、同社は免許帯域を利用するLTE-Mの敷設も2016年3月に完了しており、今後は、これら2つの柱にLPWA網を展開していくとしている。

 なぜ、SKテレコムがLoRaWANの構築期間を6カ月も縮めることができたのか。背景には韓国政府のIoTへの積極的な取り組みがある。

 2016年3月16日の発表でSKテレコムは今後2年間で1000億ウォン(約87億円)以上をかけて、(1)LPWA網を2016年内に敷設、(2)IoT専用モジュールを開発、(3)IoTプラットフォーム「ThingPlug」をアップグレードしていくといった戦略を掲げた。

 時を同じくして、韓国の未来創造科学部(MSIP:Ministry of Science, ICT & Future Planning)が、900MHz帯(917M~923.5MHz)における電波送信出力上限(従来は10mW)を200mWまで引き上げる意向を発表。同5月20日の「無線設備規則の改正」により発効となった。電波送信出力が増力されれば、基地局の設置数を削減することが可能になる。

 こういった国を挙げた韓国の取り組みが、LoRaWANのインフラ構築期間短縮につながったようだ。

IoTエコシステムの構築を目指すSK

 SKテレコムのLoRaWAN網は、月額定額制の料金プラン「Band IoT」を提供している(ただしこの名称は英語版プレスリリースのみに記載)。月350ウォン(約30円)の最も安いプラン「Band IoT 35」から月2000ウォン(約173円)の最も高い「Band IoT 200」まで、6種類のプランから選べるようになっている。同社によれば、Band IoTの料金設定は同社のLTEベースのIoTサービスと比べて約1/10にすぎず、IoT関連サービスの普及に大きく貢献するとしている。

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