政府のIT総合戦略本部は、5月に「デジタル・ガバメント推進方針」を決定した。従来のコスト削減を中心としたシステム改革から、行政サービスの利用者である国民にとっての価値の最大化へと、改革のかじを大きく切った。政府情報システムと電子行政を統括する政府CIOとして就任から6年目に入った遠藤紘一氏に、これまでの成果と明らかになった課題、今後の展望を聞いた。

(聞き手は本誌編集長、井出 一仁)

システム改革や電子行政の指揮を執って5年。強調できる成果は。

内閣官房 内閣情報通信政策監(政府CIO)遠藤 紘一氏
(写真:新関 雅士)

遠藤 政府全体のシステム運用経費は年間約4000億円もかかっていましたが、その3割、1200億円を継続的に減らせるようになりそうです。

 もちろん、一度にできるわけではありません。サーバー群の稼働率を詳細に把握して最適化するなどシステム面の改善と、業務改革(BPR)を組み合わせて徐々に減らしていきます。すでに得られた削減効果は年間で300億円弱。サイバーセキュリティ強化の際の数百億円の政府予算上積みには寄与したでしょう。

IT化を含む業務改革の象徴的な例は。

遠藤 着任時に菅内閣官房長官から人事・給与・旅費のシステムが省庁ごとにばらばらで、2003年に着手したのに統一できず困っていると言われました。不具合の全数分析や移行ノウハウの共有を進め、人事・給与は2017年3月から全省庁で共通システムを利用できるようになりました。旅費システムもまもなくです。

 ハローワークシステムでは、就職した人が2~3カ月で離職してしまうミスマッチをできるだけ減らせるように、データベースも含めつくり直しています。求職者の実績やスキルが民間人材会社に来る人とは差異があり、民間と同じ手法では効率化できません。定着率を高めるには対面でのコンサルティングが重要なので、システムと人の最適な組み合わせを探りながら進めています。

中央政府だけでなく、自治体への助言にも取り組んでいます。

遠藤 国と地方が切れていると言われますが、つなぎにかかっています。2006年に総務省が補助金を出して都道府県単位での行政システムの共同化を自治体に要請しましたが、まだできていません。自治体クラウドは54グループが出来ましたが、システムは同じではありません。

 ただ4~5社のベンダーに集中しているので、そのどれかを使ってもらえるようにと、総務省地域力創造グループおよびIT総合戦略室の計5人くらいで自治体を回り、知事や市町村長に働きかけをしています。たとえば三重県や香川県の知事は、ぜひやりたいと言ってくれました。

 全国からノウハウをかき集め、改善方法を具体的に提案しています。行きっぱなしではなく、いつでも説明に行きますとか、疑問があったら連絡くださいと伝え、行った後には必ずやり取りが生まれています。

 地方との関係では、市町村ごとの農業委員会が個別に運用していた農地台帳システムの見直しを聞きつけて、全国一元的なシステムの整備へと変更もしました。

▼全国一元的なシステム
農地情報公開システム。データ項目の標準化も実施し、就農希望者が全国横断検索ができるようにした。2015年4月の稼働時点で約4万件だった月間アクセス数は、2017年3月には約13万件まで伸びた。
(写真:新関 雅士)

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