PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)が法制化され、16年がたった。4年前の2011年の法改正では「公共施設等運営権制度(コンセッション)」が導入され、空港民営化なども可能になった(仙台空港、関西国際空港などで予定)。PFIはアベノミクスの成長戦略のメニューにも掲げられ、いよいよ本格普及期を迎えつつある。だが現実にはなかなか広がらない。何が障害か、考えてみたい。

第1次ブームは新規の建築が対象

 まず99年の第1次PFIブームを振り返ってみる。当時は財政赤字への危機感のもと、公共事業とハコモノ建設への批判が強かった。地方財政健全化法や事務事業評価ブームも影響し、自治体の建設プロジェクトが滞った。困ったゼネコンなど民間側が“費用の後払い”の手段としてPFIを提案し、自治体側もそれに乗った。そこでの対象は建築物が多く、契約内容はサービス購入型が7割だった。

第2次ブームは既存のインフラが対象

 11年の法改正で導入されたコンセッションは、公物管理法の壁を打破する狙いがあった。社会インフラの所有権まで企業に渡してしまうと、災害の際に税金を使って復旧してよいのかといった批判を招く。企業側も固定資産税を払いたくないなどの理由からコンセッションが採用された。そして安倍政権の日本再興計画では「10年で12兆円」(現状4.1兆円)という目標が掲げられ、空港以外にも道路、下水、水道などが対象とされた。

 だが期待された関西空港のコンセッションの落札企業はなかなか決まらず、大阪市の上下水道の民営化(コンセッション方式)も市議会の同意が得られずに頓挫している。その他の自治体のPFI案件もなかなか広がらない。

財政規律の再構築とセットで

 自治体の関係者は、「PFIは手続き(書類作成)に時間と手間がかかる」「地方債で簡単に資金調達できるので困っていない」「(コンセッションにすると)ほかに転用が利きにくい技術系職員の処遇に困る」という。また「そもそも新規のインフラ建設があまりない」という意見もある。だがPFIは、八尾市民病院の例のように、既存施設の維持管理や運営、改築にも適用できるということがあまり知られていないようだ。

 民間側はどうか。「建築なら得意だがインフラや土木の専門家は少ない」「公共事業ではあえてPFIをいれなくても今のままでもうかる」と、こちらもあまりやる気がない。

 このようにPFIが普及しない理由は様々だが、筆者は最大の障害は自治体が自由に、かつ安い金利で借金(起債)できる今の地方財政の仕組みにあると考える。起債金利がPFIの資金調達金利を上回れば、海外のようにPFIは普及するだろう。PFIと財政規律の再構築はおそらくセットの課題である。アベノミクスはその意味では3本目の矢である成長戦略に加え、4本目の矢として「財政規律+官業民営化」をセットで掲げる必要があるだろう。

上山 信一(うえやま・しんいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授
上山 信一(うえやま・しんいち) 慶應義塾大学総合政策学部教授。旧運輸省、マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。国土交通省政策評価会委員(座長)、大阪府・市特別顧問、新潟市政策改革本部統括、東京都顧問および都政改革本部特別顧問も務める。専門は経営改革と公共経営。著書に『検証大阪維新改革』(ぎょうせい)、『組織がみるみる変わる改革力』(朝日新書)、『公共経営の再構築-大阪から日本を変える』(日経BP社)、『大阪維新 橋下改革が日本を変える』(角川SSC新書)、『行政の経営分析-大阪市の挑戦』(時事通信社)など多数。
出典:メールマガジン「日経BPガバメントテクノロジー・メール」2015年9月10日配信号
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