前回に続き、今回も大阪の維新改革の進捗を評価する。今回は行財政改革について報告する。

(9)権限委譲 

 府から市町村への権限委譲が進んだ。大阪府から市町村に権限委譲された条項の数は、今や全国1位(1955条項)になった。 2009年には全国15位(779個)だったのに比べると大躍進だ。これは「意思決定はなるべく現場に近いところで」という考え方に基づく。小さな市町村については、権限を委譲するために共同の受け皿組織を作ってもらうことまでやった(例えば小中学校の教育人事権など)。

 大阪市も同様である。本庁から各区役所への権限委譲が進んだ。一般会計予算に占める区の自主事業予算の割合も増えた。2014年には2012年比の3倍に増え、その割合は他の政令市をはるかに上回る。

(10)人事制度では全国初の改革が多数

 府も市も、新卒の採用試験をエントリーシートと面接中心の民間方式に変えた。また、中途採用を増やした。さらに府市ともに職員の人事評価に相対評価を導入したほか、幹部職員のポストを広く公募した(24の区長ポストのうち18を外部から登用)。

(11)財政規律と公共事業の問い直し

 受益者の視点から公共事業や治水戦略のあり方を見直した。具体的には槇尾川(まきおがわ)ダムの建設を中止したほか、ダム一辺倒の治水政策を転換した。財政については「収入の範囲内で」の原則を徹底し、もともと黒字だった市に加え、府も単年度の実質収支を黒字化させた。

(12)情報公開

 これについては、府市ともにこの5年間で透明性を大幅に高め、全国市民オンブズマン連絡会議の調査ではついに全国1位となった(直近の2010年と2011年)。

(13)国の制度の見直しの働きかけ

 今回の維新改革では、大阪の実態に即した改革を進める途上で、国の制度のおかしさへの気づきが多々あった。大阪府市から国に制度の見直しを働きかけて、大阪発の問題提起が国の政策転換につながった。

 たとえば直轄交付金問題、学力テストの公開問題、関空問題、教育委員会制度などである。なお、医療戦略やエネルギー戦略についても、府市合同で全国から有識者を集めた検討会議を設け、大阪独自の政策を立案した。

 以上4回にわたって維新改革の内容を紹介してきたが、この7年の間に大阪はずいぶん変わった。多くの住民が、地下鉄の値下げや終電延長、あるいは駅のトイレがきれいになるといった身近な変化を感じている。2014年9月に読売新聞社が大阪市内の有権者を対象に実施した調査では、橋下徹市長の支持率が56%、そして都構想への賛成が53%と過半数を超えた。

 だが、大阪都構想や地下鉄民営化など大きな問題の解決は、最終的には議会の賛成を得なければ進まない。これらの帰すうについては、今年4月の統一地方選挙、そして5月の大阪都構想の住民投票の結果を待つことになるだろう。

上山 信一(うえやま・しんいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授
上山 信一(うえやま・しんいち) 慶應義塾大学総合政策学部教授。旧運輸省、マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。国土交通省政策評価会委員(座長)、大阪府・市特別顧問、新潟市政策改革本部統括、東京都顧問および都政改革本部特別顧問も務める。専門は経営改革と公共経営。著書に『検証大阪維新改革』(ぎょうせい)、『組織がみるみる変わる改革力』(朝日新書)、『公共経営の再構築-大阪から日本を変える』(日経BP社)、『大阪維新 橋下改革が日本を変える』(角川SSC新書)、『行政の経営分析-大阪市の挑戦』(時事通信社)など多数。
出典:メールマガジン「日経BPガバメントテクノロジー・メール」2015年2月10日配信号
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