大阪の改革は難航しているように見える。地下鉄やバスの民営化は条例案を何回出しても様々な理由をつけて市議会が拒否する。都構想も否決された。橋下氏が改革の目玉だと宣言したことがなかなか実現しない。だが、進まない案件は、市議会や府議会の野党の反対による。議会の承認が不要な市バスの経営改革では積年の赤字を一気に解消し、路線の抜本再編までやった。

府市合同で改革を評価

 府と市は、2014年3月から8月にかけて合同で、この6年間の行政改革(以下「維新改革」という)の進捗を評価した。

 ※報告書の全文は以下を参照
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/15336/00161971/5_shiryou2-2-kaikakuhyouka.pdf

 この6年間に府市が取り組んだ改革項目の数は、大阪府が87、市は100にもなった。中には全国初のものも多い。以下で特徴的な取り組みを紹介する。

(1)積年の懸案の解決

 

 2011年秋の市長と知事のダブル選挙を経て、府市の足並みがそろった。また、国との政治折衝力も増して、積年の懸案がいくつも解決した。例えば、高速道路の淀川左岸線の建設が決定され、ミッシングリンク問題に解決のめどが立った。また、関西国際空港の赤字問題も、国との折衝を経て、関空会社と民営化後の伊丹空港の経営統合でひとまず解消した。そして米フェデラル・エクスプレスのハブ拠点や国内LCC(格安航空会社)の誘致につながった。

 市から府へのWTC(ワールドトレードセンター)ビルの譲渡や、府と市の信用保証協会の統合も実現した。また、医薬品・医療機器の審査などを行う独立行政法人である医薬品医療機器統合機構の関西支部(PMDA-WEST:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)の誘致にも成功した。

(2)都市再生のための資産の組み替えと投資の決断

 維新改革では予算の節約や人員の抑制といった従来の手法を超え、府と市の不要資産を成長のためのインフラ投資に振り向ける動きが始まっている。

 その典型が、泉北高速鉄道などを保有する大阪府都市開発株式会社(OTK)や、伊丹空港の大阪国際空港ターミナル株式会社の株式売却である。府は売却資金、合計約423億円を北部の北大阪急行電鉄や東部のモノレールの延伸に振り向ける予定だ。また、大阪市の柴島浄水場の規模縮小や余剰地の公園などへの用途転換、森ノ宮・京橋・OBP(大阪ビジネスパーク)の再開発などが決まった。さらに、凍結されてきた中之島の私立近代美術館(仮称)の建設が決まったほか、大阪市の天王寺公園のリニューアル(慶沢園、美術館、動物園を含む)が始まった。

 また2015年春には、府立中之島図書館の表玄関が80年ぶりに一般入館者に開放される。同館は1904年に建った重要文化財だが、長年、利用者は裏口からしか入れなかった。隣接する大阪市の中央公会堂との連携も始まった。また、公会堂ではおしゃれなレストランの公募誘致も始まった。大阪では府市の財源不足のために将来投資が一律に凍結されていた。それを精査し、戦略的意義のあるものには思い切って投資することにした。

(3)住民サービスの根本的見直し

 図書館や文化施設などの住民サービス施設の設備更新や接客改善も始まった。例えば老朽化した公共施設のトイレの改修や洋式化、JRや私鉄よりも早かった地下鉄の終電時間の延長、駅売店の民営化などが実現した。さらに大阪市は、区役所に予算と人事の権限を移譲し、区の独自予算による地域特性に合わせた事業が始まった。

 大阪の維新改革といえば大阪都構想や教育委員会改革などの制度改革がよく報道される。しかし、地道な市民サービスの改善や遅れているインフラ整備など手堅いところの改革も始まっている。

(続く)

上山 信一(うえやま・しんいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授
上山 信一(うえやま・しんいち) 慶應義塾大学総合政策学部教授。旧運輸省、マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。国土交通省政策評価会委員(座長)、大阪府・市特別顧問、新潟市政策改革本部統括、東京都顧問および都政改革本部特別顧問も務める。専門は経営改革と公共経営。著書に『検証大阪維新改革』(ぎょうせい)、『組織がみるみる変わる改革力』(朝日新書)、『公共経営の再構築-大阪から日本を変える』(日経BP社)、『大阪維新 橋下改革が日本を変える』(角川SSC新書)、『行政の経営分析-大阪市の挑戦』(時事通信社)など多数。
出典:メールマガジン「日経BPガバメントテクノロジー・メール」2014年12月10日配信号
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