7月4日に水道法改正案が衆議院の厚生労働委員会で可決された。改正案の趣旨は、現在、市町村ごとに運営する事業を広域化して効率化すること、そして都道府県がその推進役を担うという内容だ。

 背景には老朽化した水道管の更新が進まない事情がある。6月に発生した大阪北部地震では、耐用年数40年を10年以上超えた水道管が破損し、広く影響が出た。全国で見ると、40年の耐用年数を超えた水道管は平均14.8%(2016年度末)。更新率は0.75%だから全て更新するのに130年以上かかる計算となる(厚生労働省調べ)。

 これだけではない。人口減と一人当たり使用量の減少で収入が減る。さらに人手不足が追い打ちをかける。小さな市町村を中心にベテラン技術者の補充人材が採れなくなっている。水道は生活インフラの筆頭に来る存在だ。だから古くから整備され、日本の技術は世界一といわれ、設備も立派だ。だが老朽化と需要減が同時に進むと、効率の悪い古い設備を抱えた水道事業は資金と人材の両面から立ち行かなくなる。30年後には全国平均で約1.6倍の値上げが避けられないという試算結果もある。

まずは将来シミュレーションから

 各市町村が何をすべきかは明快だ。管路の寿命から逆算し、いつどの程度の更新が必要か、見通しを立てる。浄水場については現在の設備の稼働率(6割程度のところが多い)と将来の需要を照らし合わせ、設備廃棄(更新しない)や隣接自治体からの水の購入などの調達戦略を見直す。そして以上の計画に合わせた人員と資金の計画を立てる。はじき出した数字を見て、必要なら「料金値上げ」も想定する。以上が基本動作である。

 また多くの場合、ここで話は終わらない。「民営化(民間委託、コンセッションなど)」「広域化(隣接自治体との事業統合など)」などの手段を繰り出せば、もっと生産性は上がる。つまり水道局の在り方を変えれば料金値上げは抑制できる。

なぜ改革が進まないのか

 以上は至極当然の作業だが、きちんとやり終えている市町村は少ない。第1には、経営規模が小さすぎるため日常を回すので精いっぱいで先を考える余裕がない、あるいは人がいないという事情がある。

 第2には変化への恐れである。将来予測をすると値上げの話になる。すると議会はその前にもっと合理化しろという。すると民営化や広域化を検討することになり、水道局は縮小となる。それを見たくないという深層心理があるだろう。

 逆の場合もある。水道局が思い切った合理化案を出す。すると既存の秩序や受発注の構造を変えたくない一部の議員が反発する。たとえば、こう言う。「水道は命に直結する。民間に任せて、利益追求のために手抜きをされたら危険だ(「命の水」論)。直営を維持すべきだ」「民営化したら外資やハゲタカファンドがやってきて、もうけのために値上げをする。地元の水は地元で守る」といった具合である。一理はある。海外ではいったん民営化した水道事業が再公営化される場合があり、背景に料金問題があったケースもあるらしい。

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