昨今、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、そしてSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が話題だ。MaaSは利用者あるいはモノを電車、バス、マイカー、自転車などの交通モードを最適な形で組み合わせ、極力早く、安く、快適に移動する手段を提供する。例えばオーストリアのウィーンには「年間365ユーロで市内交通は何でも乗り放題」というサービスがある。さらにフィンランドのヘルシンキなどにはタクシー(使用回数や距離に上限あり)や自転車を組み入れたサービスもある。

 SaaSは、人がやっていた作業をインターネットを介したクラウドコンピューテイングで処理し、生産性を飛躍的に高める。肝はアウトソーシング(外注)、シェアリング(共有化)、そしてアップデーティング(頻繁な自動更新)である。かつては社内(庁内)にあった情報システムが今は民間企業にアウトソーシングされ、さらに旅費精算、請求、勤怠管理、在庫管理などの定型業務のソフトは汎用化され、クラウドで提供される。

 両者は別物に見えるが、MaaSはSaaSの技術が前提だ。時刻表や運賃の交通アプリはSaaSの一つだし、交通事業者は運行システムなどのSaaSを他社と共有し、遅延の際のリアルタイムでのダイヤ調整や運賃収入の分配をする。

なんでも『アズ・ア・サービス』の時代

 『○○・アズ・ア・サービス』という言い方はいろいろな分野に広がりそうだ(XaaSという)。例えばWeWorkなどのシェアオフィスは、古典的には部屋を貸す不動産業だ。しかしセンスがいい起業家が好んで入居し出会いが生まれ、新たなビジネスにつながる。そういう意味で『OaaS(オフィス・アズ・ア・サービス)』といえそうだ。公共分野でも例えばニューヨークや大阪の市立図書館は、本の貸し借りやレファレンスを超えたビジネス支援やネットでの情報提供もしている。これなども『LaaS(ライブラリー・アズ・ア・サービス)』といえるだろう。

 なぜ『アズ・ア・サービス』の時代なのか。第1には怒濤(どとう)の勢いで進むネット化である。IoT(インターネット・オブ・シングズ)の時代には機械も人もすべてがネットでつながり、データが常時やりとりされる。そこから新たな工夫やイノベーションが生まれる。身近ではロボットによる株式の高速取引がそうだし、自宅でネットを通じてどんな映画でもすぐ見られる時代になった。

 第2にはAI(人工知能)の進化がある。AIを使った交通アプリのおかげで我々はA地点からB地点までの最速の交通手段がすぐに探せる。さらにAIは自動運転はもとより、出発点も到着点もルートも決めないオンデマンド型の乗り合いカーサービス、つまり“バスでもタクシーでもない乗り物”を誕生させつつある。これがMaaSのレベルを飛躍的に上げる。ある地方都市での試算ではこれが実現するとマイカー保有数は現在の40分の1に減るという。

『サービス』は資本主義のフロンティア

 第3には、組織の壁を越えた資源のシェアリングによるスケールメリットの探求が、資本主義の次のフロンティアになり始めた。近代資本主義は石炭をテコに新大陸をフロンティアに発展した。戦後は石油と大企業組織をテコに発展した。企業は巨大組織化で資金調達、販売、生産の力を高め、大量生産と大量販売を実現した。フロンティアは「大衆」だった。大衆を教育し、能力を引き出し、労働者として雇用し、彼らはまた消費者市場を生んだ。三種の神器(テレビ、洗濯機、車)など憧れの商品が経済を牽引した。

 それが途上国にも行き渡りつつあり、そろそろ限界が見えてきた。そこで資本主義が次にテコとしつつあるのが「シェアリング」であり、その時代のフロンティアが『アズ・ア・サービス』の『サービス』なのである。

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